Tournament article
ジーン・サラゼン ジュンクラシック 1999
難関の18番ホールで、ジャンボ尾崎がまさかの大叩き。その真相は…。
17番までは、飯合肇と4打差。
2位以下は大きく引き離され、半ば諦めムードが漂っていた。翌日、最終日のジャンボ尾崎・独走Vシーンを、誰もが想像しているふうでもあった。
18番、485ヤードのパー4。右に池、正面と左側にはバンカー。さらにグリーン手前にも池が広がる。
3日間を通して、ここでボギー以上を打った選手は実に131人。ジャンボも2日目にボギーを叩いている難易度1位の最後の鬼門。
この日のジャンボ尾崎の第1打は、フェアウェーど真ん中。最高の位置だ。ピンまでの残り距離、190ヤード。
「第2打を打つ前、後ろに誰かが歩いてくるのがわかった。(キャディの)藤井が、『止まってくれ』と言っている間、ずっと構えた(アドレスした)ままでいたから、間合いが取れなかった」(ジャンボ尾崎)。
17番までは、同組の飯合肇、尾崎健夫は、完全 な引き立て役だったが… 5番アイアンで第2打を打った瞬間、ジャンボ尾崎は思わずクラブを投げ出した。 ボールは、右にふけてそのまま失速。
水しぶきを跳ね上げた。池ポチャだ。
「190ヤードの池越えは、200ヤード近いわけだから、非常に緊張感があるよ。そういうときに、間合いがずれてしまった。あのとき、一度、仕切りなおしをすればよかったんだ。ビッグ・ミステークだね」(ジャンボ尾崎)。
気を取り直して、残り60ヤード地点の池の手前でボールをドロップ。ジャンボは、サンドウェッヂで打ちなおしの4打目を打ったが―。
「2打目の後遺症だよ。痛てーよ、痛いの、通りすぎてるよ」(ジャンボ)
再び、悲鳴の交じったどよめきが沸きおこった。
ダフって大ショート。またもや池ポチャだった。
フェアウェー左のバンカー内の浮島のようなところからの第2打を、ピン奥7メートルに乗せて、グリーンへ向かっていた飯合は、水の音と観客の叫びを聞いて、何事かと振り返った。
「振りかえってまさかと思ったよ。ピン奥に乗せて最悪ボギーあがるだろうって思っていたからね。なのにあんなところからまた池に入れて、何を遊んでいるのかと思ったくらい。いったい、ジャンボはこれでいくつ打ったことになるのか数えたけど、こんがらがっちゃってわからなくなっちゃった。 18番は本当に怖いホールだ。最終日だったら、大変なことになっていたね」(飯合肇)
再び打った第5打は、ピン手前3メートル。これも沈められず、ジャンボはこのホール、まさかのダブルパー。
「諦めちゃいけない」と、きっちりパーを拾った飯合と、通算9アンダーで並び、最終日を迎えることになった。
まさかのダブルパー(8)で、一挙に飯合に並ばれたジャンボ 実は、ジャンボ組が18番ホールに入る前。
ティショットを打つまでにかなりの待ち時間があった。最終組から11組前の組でまわっていた加瀬秀樹が、18番でフェアウェー左ラフのススキの根元にボールを打ちこみ、この捜索に時間がかかった。球は見つからず、タイムオーバー。
後ろの組をパスさせるハプニングが起きたあたりから、徐々にプレーの進行がつまりだし、ジャンボ組がきたときには、まだ18番のティグラウンド上で2組がティショットを待っているありさまだった。
ジャンボ組は、約20分、足止めを食った。飯合は「あの時間が、微妙に影響しているのではないか」と言った。
それでも、ジャンボはプレー後に「(最終日を)面白くしたんだよ」と、不敵に笑った。 飯合は、そんなジャンボに舌を巻いた。「あの状況で、『面白くしたんだよ』といえるジャンボはやっぱりすごい。オレだったらきっと立ち直れないよ。
明日は、2位狙いとかじゃなく、一緒についていくつもりで勝負したい」。
ジャンボ尾崎、飯合肇、桧垣繁正の最終組は明日の10時50分にスタートする。 この戦いから、目が離せない。