Tournament article
東海クラシック 1999
横尾要がツアー通算2勝目
横尾は、最終組のひとあし先に通算14アンダーであがり、1打差2位で18番ホールにやってくるスチュワート・シンクのプレーを待っていた。
勝敗の行方を気にする仲間たち…丸山茂樹や、久保谷健一、後輩の今野康晴や小林正則も横尾と一緒になって、シンクのプレーに見入った。
シンクの第2打は、一直線にピンに向かって飛んできた。
この日のピン位置は、右エッジから4ヤード。さらに2ヤード先には、池が待ちうけるスリリングな設定だった。
いったんピン右横でバウンドしたシンクの球は、右に跳ねて観客の悲鳴とともに、池に沈んだ。横尾の勝利が決まった、瞬間だった。
「喜んじゃいけないんだけど、やっぱり、喜んじゃったよ」(横尾)
1歩間違えれば、横尾も、シンクと同じ目にあっていたかもしれない。
16番で最終組のシンク、片山、伊沢がそろってボギーを叩き、自分が単独首位に立ったことを知ってから迎えた18番。
「最後のティショットはドライバーを持とうと思ったんだ。首位に立ったことは知っていたし、ピンの位置を考えるとセカンドで(できるだけ短い)アイアンを握ったほうがピンに向かって打っていけると思ったからね。
でもやっぱりフェアウェーをキープしなけばと思って2番アイアンで打った。『フェアウェーをキープして、第2打をピンの左に乗っけて』と、シナリオはできてたんだけど、けっきょく、気持ちがピンに向いてた。フェアウェーから、あそこに打っちゃいけないよね。シナリオは、だいぶはずれたよ(笑)」(横尾)
「ドローボールを打とうとした」、残り168ヤードの8番アイアンでのショットは、打った瞬間、「やばい」と感じた。フェースが開いてこすり気味に当たり、放物線は完全に池に向かっていたからだ。
しかし、横尾には勝利の女神が味方していたようだ。
「ドンと落ちて、手前に赤線(ラテラルウォーターハザードの境界線)、ディボットとボールがあって埋まって止まってたんだ。あんなところで球が止まるんだね。運がいいとしか思えない。あそこにはきっと何か(神様みたいなものが)いたんだよ。ほんとついてた」。
運良く、球はちょうど池の淵に80センチほど、島のように入り組んでいたラフで止まっていた。観客から、安堵のためいきがあちこちからあがった。
しかし、ホっとしている場合ではない。そこから、最低パーで上がっておかなければ勝ち目はない。「少し沈んでいたし、やな感じのライだった。しかもボールに泥がついてた。ピンの上にはつけたくなかったし、思ったイメージの球が出せないような気がしたから」。
そんな、難しい状況のアプローチを、横尾はピン右1メートルに寄せた。
これを沈めた途端、横尾の顔から、はっとするほどの笑顔がこぼれ落ちた。
「もちろん、何が起こるかわからないから、プレーオフは覚悟したけど、あそこにボールが止まった時点で、ほとんど勝った、と思いました。パーを取れば勝てると。 あのピン位置ではまずバーディは取れないですからね。
でも、シンクは第2打でピンを狙っきた。そのあたりはやっぱりすごいと思いました。
普通だと左にはずすところですよ。それをちゃんと狙ってくるんですからやっぱりすごいです。
去年の初優勝(アコムインターナショナル)はとても嬉しかったのを憶えています。
でも、今回の2回目の優勝は、だいぶ気持ちが違いますね。今年は、2,3回勝つつもりで調整してきましたから、時期的には遅いんです。春先に1個、勝っとく予定でいましたから。
1回は、勢いで勝てる場合もある。だから早く2勝目をあげたかった。
今回で、やっと責任を果したような感じがあります。責任というのはちょっとおおげさかもしれませんけれど…。今回の優勝は、棚ボタ。上位が崩してくれただけです。
だから、勝ってただ喜んでるだけじゃなく、これから先のこと、もっと考えていかなくちゃいけないと思う。
今後は毎試合で優勝争いができるよう、もっといいゲームをしていきたいと思います」(横尾)。