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日本プロゴルフ選手権大会 2000

佐藤信人の14番。「シャツがめくれあがったのが気になって」連続ボギーをたたき、嫌なムード

佐藤信人の14番パー4。残り160ヤードの第2打を、3番アイアンで打とうとバックスイングをした瞬間、シャツの左そでが2センチほど、めくれあがっているのが左目はじから飛び込んできた。
「嫌な予感がした」が、そのまま打ったショットは、大きくダフってグリーン手前のラフへ。
「アドレスしたときは気がつかなかった。(ショットを)やめようと思えばやめられた。仕切り直しするべきだった」と後悔しても、あとの祭りだ。第3打は寄せきれず、このホールをボギーとした。
前の13番パー4でも、1メートル半のパーパットをはずしていただけに、佐藤に嫌なムードが漂いはじめる。
通算4アンダー。この時点で、2位の檜垣、田中らと2打差。

15番パー4に入ると、雲行きがあやしくなってきた。ティショットを打つと、案の定、雨が降り出した。セカンド地点にむかう途中で、サイレンが鳴った。
16時02分、雷による競技中断。コース上空は、真っ黒な雨雲に覆われていた。佐藤は雷を避け、同組の東聡、前組の檜垣繁正らと近くのコース管理棟に逃げ込んだ。

「競技中断は嫌だな、という思いがあった。先月のキリンオープンでも2回の中断があって、あのときは2度とも(再開後のホールで)失敗していたから・・・。じっと座って待っていたから、体が硬直してしまったんですね。
今回は、そんなことがないように、ジュースを1 本買って飲んだり、場所を見つけてストレッチをしたり、東さんたちと世間話しをしながら極力、体を動かすようにして、体が固まらないよう気をつけました」。

そうして、16時35分。競技再開のサイレンが鳴ると同時に6番アイアンで打った佐藤の、残り167ヤードの第2打は、ピン30センチにピタリとついてバーディ。苦手だと思っていた“競技中断”が、かえってそれまでの悪い流れを断ち切ったのだった。

「再開後の15番の第2打は、今日はグリーン左手前にピンが切ってあって、右からドローでいければ最高だな、と思った。距離は、6番アイアンで打てばちょうどいい感じ。左にだけははずしたくない、と打ったショットは本当に感触のいいあたりでしたね」。

最後の残り2ホールは、プレッシャーとの戦いだった。メジャーの重圧。経験したことのない、気持ちの高ぶり―。

「これまでの記憶にない、ものすごい緊張感に襲われていましたね。手がしびれていました」という17番では、1.5メートルのパーパットをはずしてボギーとし、2位の檜垣と1打差、3位の東と2打差で迎えた最終18番パー5。

「18番の第2打では、少し迷いました。ティショットでクラブが開いて右に飛んでいってミスしたんですけど、運良くバンカーの手前で止まっていて…。そこからは残り204 ヤードだったから、2オンさせることもできたけど、最悪の場合、東さんがイーグルとってもしょう がない、という気持ちで刻むほうを選びました」

残り110ヤードの第3打を、ピン右6メートルにきっちり寄せて、グリーンにむかって歩いてくる佐藤の表情は、すでに心もちほころんでいた。これを2パットで入れれば、勝ちだ。
タップインでOK距離のウィニングパットを沈め、両手を大きくつきあげた佐藤の笑顔は、そのとき美しい夕焼けに染まっていた。

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