Tournament article
タマノイ酢よみうりオープン 2001
投げ込んだウィニングボールは2つ
ボールが、カップ手前5メートルに差し掛かったとき、福澤は、「入る」と確信していた。
「始めフック、最後は真っ直ぐ」と読んだ20メートルものイーグルパットは、思いどおりのラインに乗っていた。
「スーっと転がっていて・・・ゾクゾクしていた。まさかっていう距離が、ど真ん中から入って・・・。あんなのもう、二度と入らないよ(笑)」
本戦の18番、通算16アンダーで先にホールアウトしていた鈴木亨と並び、プレーオフ進出を決めたパッティング。
歓喜のあまり福澤は、沈めたばかりのボールを拾い上げ、思わず、観客席に投げ込んでいた。まるで、ウィニングボールのように。
「最高に、気持ちよくて・・・。
あれは、雑念もなにもない、パッティングでした。
ただ、“こんなチャンスはめったに来るもんじゃないんだから、結果、2パットでも3パットでも構わない、とにかく、悔いの残らないパットをしよう”と決めて、打ったんです。
それが思ったとおりに寄っていって・・・。
あのイーグルがあったから、プレーオフホールでは、まったく緊張がなかったですね」
振り返れば、11番。前の10番で、フェアウェーからのボールをボギーにして、落ち込んで迎えたホール。
ここでも、フェアウェーから残り144ヤードのセカンドショットをミスし、グリーンから20ヤード離れたバンカーに打ち込んだ。
「また、ボギーにするのか・・・」
自分に対する情けなさでいっぱいになったが、懸命に気持ちを奮い立たせ、アプローチで1メートル半に寄せてパーセーブ。
「きっと、ここで2ホール続けてボギーにしていたら、諦めていたと思う・・・。
実は、11番が、今日のキーホール」
3打差2位スタートのこの日は、「最終ホールで、V争いの中にいること」を目標にスタートした。
通算14アンダーでターンすると、首位を走っていたはずの宮本がスコアを落とし、自分が、宮本、鈴木とともにトップで並んでいることを知った。
直後の10番は、「体が硬くなるかな」と懸念したが、ティショットは、芯を食っていた。
セカンドをミスしてボギーとしたが、次の11番で、そのミスを生かせた。
17番では、1.5メートルのチャンスパットをはずして悔しがったが、18番のティショットは無心だった。
それまでは、同組の深堀に、20ヤード以上は置いていかれていたティショット。
このホールに限っては、その深堀を、「なぜだか」20ヤードもアウトドライブしていた。
約320ヤードも飛ばし、残り237ヤードの第2打を、スプーンで乗せてつなげた、奇跡のイーグルパットだった。
「あのティショットがなかったら、プレーオフはありませんでした。
イーグルがなかったら、亨君に追いつくことはできませんでした。
11番がボギーだったら、勝てませんでした。
前半の頑張りがなかったら、いま、僕は、ここにいない・・・」。
プレーオフに競り勝った福澤は、2メートルのバーディパットを拾い上げると、改めて、“2個目”のウィニングパットを、観客席に投げ込んで「今回の勝ち方、なんだかすごく、かっこ良くない」と、おどけてみせた。