Tournament article
サン・クロレラ クラシック 2001
「今週は自然との戦い、それがよかった」
優勝インタビューの席上で藤田は、しきりに首をかしげるばかりだった。
「本来なら、僕がここにいられるはずは、ないんですけどねえ…」
通算5アンダーで突入したプレーオフ、友利を1ホールで下した直後も、周囲の運営スタッフに、「本当に僕が勝ったのかな?」と真顔で聞いて、笑いを誘った。
ゴルフの調子そのものは、最悪だった。
「球のつかまりが悪い。ちょっとでもミスしたら、右に行く」
この日、左からのアゲンスト風が吹いたプレーオフの18番ホールでも、そのミスは出ていた。
そんな状態で勝てたことに、「信じられない」と、繰り返した。
もちろん、4年ぶりの優勝はノドから手が出るほど欲しかったが、それよりも、藤田の中には、「こんなゴルフでは、今週は勝てるわけがない」という思いのほうが強かった。
しかも、コースは日々、石狩川からの強風が吹き止むことがない難コンディション。
「風と雨…。僕のゴルフの調子は悪かったし…だから今週は、とにかく自然を相手にがむしゃらに頑張って、その結果がどうなっても構わない、という気持ちでした。まったく、無欲だったんです。でもそれが、良かったのかもしれない。勝ちたいと思っても勝てなくて、勝つつもりのないときに勝てちゃって・・・ゴルフってほんと、変ですねえ…(笑)」
今季2度目のプレーオフ。5月のダイヤモンドカップで伊沢に敗れた無念を晴らし、「僕は、なかなか現実を認めないタイプ。だから今回の優勝も、今はまだ信じられないけれど、あとから次第に喜びと自信が沸いてくるのだと思います。周囲の方の祝福で、そのうちこの鼻も高く伸びてると思いますよ(笑)」
4日間、選手たちに強く吹きつけた北海道の風は、表彰式のころにはすっかりさわやに、勝者の頬を優しく撫でて行った。
本人は、半信半疑だが、3日目には今大会ただひとり、ノーボギーのゴルフを記録。
度重なるピンチも、絶妙なアプローチとパットでしのぎ、一歩一歩、着実に勝利への階段を上った結果だった。
18番でバーディを奪って追いつき、通算5アンダーで並んで迎えたプレーオフの1ホール目。
友利が2メートルのバーディパットをはずしたのを見届けてから打った、1メートル弱のバーディパット。
これをはずして、苦笑い。
OK距離のウィニングパットをタップインで沈めると、ちょっと恥ずかしそうに、帽子のつばを挟んでファンの祝福に応えた藤田。
「最後こそ格好良く決めたかったのに…最後まで応援してくださったギャラリーのみなさんには、ごめんなさい、ですよね(笑)」