Tournament article
JCBクラシック仙台 2002
「ビール、飲ませてあげようかな」
今週、キャディを務めるキャディの兄・勅仁さん(=写真右)は、「風呂に入れてやれよ」と言ったが、矢野は、「オレは、ビール飲ませてやろうと思うんだけど」と、大笑い。
といっても、矢野がご馳走したい相手は、“人”ではない。
愛用のピッチングウェッジ。
ご褒美をやりたいほど、この日は、この1本のクラブが、大活躍だったのだ。
まずは17番、133ヤードのパー3。
ダフリ気味のティショットだったとはいえ、ピン手前で2つ、軽くバウンドしたボールは、スルスルっと、カップに吸い込まれた。
自身、ツアー初のホールインワン達成!
カップインの瞬間は、遠くて確認できなかったものの、ギャラリーの「入った入った!」の大歓声につられて、大きくバンザイ。反射的に、背後のホールインワン看板を振り返ると、でっかく『2,000,000円』の文字が…。
思わず、小躍りで喜ぶ矢野の後ろで、勅仁さんが、ボソっとつぶやく。
「予選ラウンドなら、50万円だぞ」
その言葉で、冷静に返ってハーフターンだ。
“ピッチングウェッジ”の次なる活躍は、後半の4番パー5だった。
残り10ヤードの花道からの第3打が直接、入って人生初の1ラウンド2イーグルに、「ゴルフって、わからないもんですね…」と、矢野は、しみじみと話した。
開幕戦で5位に入るなど、快進撃が続いたばっかりに、「もっと上にいけるはず、と欲をかき」、最近、ゴルフが煮詰まっていた。
先週は、2試合連続で予選落ち。
「初心に返って、地道にやろう」と心を入れ替えた途端の、今週の好スタートだっただけに「ゴルフって、こんなものなのかな」。本人が、いちばんビックリしたのも、無理はない。