メジャー舞台を想定して打った、片山晋呉のウィニングショット

総武にいながら、片山の心は、ベスページにいた。
今年の、全米オープン開催コース。
タフなメジャーのセッティングを思い出し、
「もし今日があの舞台なら、僕はいま、この位置にはいない…」
だからこそ、最後まで攻め続けなければ、と自分に言いきかせた。

2位と3打差つけてやってきた18番。
キャディの坂詰和久さんが、「安全に、グリーン右手前狙いでいいです」と言った。
すかさず、片山は言った。
「ここで、逃げるような僕じゃない。狙うよ」
これは、メジャーの舞台で、自分のまだ上に、20アンダーの選手がいるつもりで、戦い抜こうと考えたのだった。
ピンまで残り153ヤード。
7アイアンで振りぬいた第2打は、ピン上30センチに落ちて止まった。
沸き起こる大歓声。
ガッツポーズで答えたあとに、思わず片山は、寒そうに両腕をこすり合わせた。
「あの場面で、あそこに打てる自分に鳥肌が立った。素直に、『すごいな』って思えたんです」
“世界”を想定して放った、渾身のウィニングショット。
そんな片山を、もう、誰も、追いかけてはこられなかった。
「完璧なゴルフをやりとおせたこと、他のみんなに、『あれじゃしょうがない』と思わせたこと、それが嬉しい…」

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