Tournament article
全日空オープン 2002
「人間として、大きな喜び」
強気が戻ったジャンボは、16番でパー3で、3メートルにつけてバーディ。続く17番パー5は、ティショットが、左ラフの木の根元。
「万事休すか…」と思われた場面でも、ジャンボは、構わず前進を続けた。
フォロースルーで、「クラブが折れることも覚悟の上」で、前方へアイアンを強振。
「どれだけ飛ぶかの計算もできない」状況で、木と木のわずかな隙間をぶち抜き、第3打を、狙える位置に持ってきた。
クラブは折れこそしなかったものの、同時に木も強く打ちつける果敢なリカバリーショットが、藤田に2オンを狙わせた。
土壇場の、逆転劇だった。
一歩、一歩、18番グリーンへと歩を進めるジャンボを、大観衆が待っていた。
割れんばかりの、スタンディングオベーション。そのとき、輪厚の森が、確かに震えた。
「ジャンボ〜!!おめでとう〜!!」
声をからした呼びかけに、何度も何度も手をあげて応えたジャンボ。
楽勝、とはいえないが、坐骨神経痛をこらえながらもぎ取った渾身の通算113勝目(海外含む)は、これまでと、また一味違った満足感がある。
「ゴルフは、追求すればするほど、悪い面が出てくることもあるが、この2年、それと必死に戦いながら、やってきた。それは、俺のこれまでの人生にはなかったこと。それをやりぬけたことは、人間として大きな喜びだ…」
鳴り止まぬ拍手にむかい、ジャンボは次の勝利を約束して、いつまでも、手を振りつづけた。
写真右 = 表彰式のあと、大勢のカメラマンに囲まれて、チャンピオン恒例の記念撮影。カップを軽々と持っているように見えるが、これがかなり重い。「(この姿勢を取れるのは)10秒が限界だぞ」と冗談を言いながら、歴代の制服を来た全日空のキャビンアテンダントのみなさんに囲まれニコやかに、撮影に応じたジャンボ。終わるやいなや、カップを下ろし、思わずでん部を押さえて、「イテっ!」。インタビューでは、持病の坐骨神経痛について「今日は痛みもなく、一番、体も充実していた」と話したが、やはり、相当に我慢しながらの18ホールだったのだろう。