Tournament article
三井住友VISA太平洋マスターズ 2002
「スイングだけ追及するだけではいけない、と…」
実に6試合ぶりの予選通過(うち1回棄権)、しかも3位タイの好成績に、手嶋の頬が緩んだ。
「プロになって3試合連続予選落ちはあったけど、もし今週落ちたら5試合連続。…ここまで来たら、もう開き直りです。この2日間、怖いものなしでやりましたよ」
わざとやけくそ気味に笑ったが、この約2ヶ月間は、つらい日々だった。
というのも、連続予選落ちの皮切りとなった9月のアコムインターナショナルのとき、「どうも最近、スイングが窮屈だな」と感じ、何年かぶりに、体重計に乗ってみた。
その数字を見て、蒼白。
ベスト73キロ前後だった体重が、なんと81キロに達していた。
「みんなにも肥えた肥えた、とは言われていたけど、これほどとは思っていなかった。かなり、ショックでしたね…」
初挑戦のメジャー・全米プロ以後、調子を崩したのも、すべて体重のせいだった、とは言い切れないが、思い当たるフシはあった。
最近の自分の甘えた食生活を含め、それは、生活態度の全般を、反省する材料となったのだ。
たとえば、甘いもの好きの手嶋は、「あればあるだけケーキを食べてしまう」、夕食では「もうお腹一杯なのに、またご飯をおかわりしてしまう」など、抑制がきかなかったのだ。
昨年の賞金1億円超を稼ぐ活躍にも、「慢心があった」(手嶋)。
自分では、そう感じていなくても、「知らず知らず有頂天になり、それが食生活にも、出ていたのでしょうね」と振り返る。
そんな自分を戒める意味で、手嶋は、食事療法によるダイエットに取り組んだ。
量をグっと減らし、飯粒はほとんど口にしない。
試合で疲れた体が、好物の菓子を求めても、ひたすら我慢した。
すぐに効果はあり、体重は減り始めたが、そのかわり試合に必要なパワーが出ず、しばらく、ひもじい思いが続いたが、「ゴルフは、スイングだけ追求するだけではダメ。体調をベストに戻すのが先決」と、耐えに耐え抜いた。
いま、手嶋の体重はピークから6キロ減。ほぼベストの76キロまで減り、ウェストも2.7センチ引き締まって現在サイズは82.3センチ。
今は、徐々に食事量を戻し、時にはケーキも口にする。
「減量に成功したから、今日、上位に来られたってこともないでしょうが、まあ、自分でも“ようやったな”と…(笑)」
最終日、以前より引き締まったその頬に、ツアー3勝目の笑みが浮かぶか。