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サン・クロレラ クラシック 2002

「まず神がいて、それから自分がいる」

土壇場で追いついて、初勝利を手に入れたクリスチャン・ペーニャ

 その瞬間、解き放たれた。
 「ハレルヤ!(※1)」
 プレーオフ1ホール目のバーディパットを決めると、空に向かって両手をひろげ、ペーニャが喜びを、爆発させた。
 2打差の首位でスタートしたこの日最終日。
 フロント9では、なかなかチャンスが決められず、一時後退。13番では今週、初のボギーを叩き、1打差で最終ホールを迎える、苦しい展開だった。
 極度の緊張感から、前日までは、2、3回で済んだリグリップ(※2)の回数も、倍に増えたほどだ。
 「心臓は、破裂寸前…(笑)。昔の自分なら、この状況にすぐに怒ったり、いらついたりして、もっと悪い状況になっていたと思う」とペーニャ。

 プレーぶりに冷静さが加わったのは、さかのぼること96年、父親をガンで失ったことがきっかけだった。
 「あれ以来、ゴルフが変ったと思う。まず、神がいてそれから自分がいる、という考え方。今日も、ずっと、神に祈りながらプレーした。そしたら、気持ちがとても落ち着いたんだ」
 この日も、思いはしっかりと、届いていた。
 本戦の18番をバーディで追いつくと、直道、ブレンダン・ジョーンズとのプレーオフ。
 その1ホール目の18番、残り239ヤードの第2打は前方に、数本の木がそびえるフェアウェー右サイド。目指すピンは、池の淵からさほど距離のない、グリーン右端に切ってあった。
 ユーティリティアイアンで打ち出した、ペーニャの高いフェードボールは、グリーン手前のバンカーに飛び込んだ。
 相手のジョーンズは、グリーン左のバンカー。直道は、グリーン手前8メートルのカラーに運んでいた。
 「直道さんは、絶対にバーディを取ってくる。僕もバーディで、次のホールへ進む」
 強い決意で打った第3打は、ピン70センチに寄った。
 直道が、ファーストパットを大きくオーバーさせ、返しのパットを外した。
 ウィニングパットを慎重に沈め、
 「最後まで、神を信じつづけて、本当に良かった…」再び、空に向かって手を合わせたペーニャ。
 そのとき、連日、どんよりとした曇り空ばかりが続いていた札幌ベイゴルフ倶楽部には、チャンピオンを祝福するかのように、澄んだ青空が広がっていた。

※1 『神をたたえよ!』という意味の歓喜をあらわす言葉
※2 アドレスしてからスイングを始動させるまでに、しっくり来るまでグリップを握り直す行為のこと

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