Tournament article
フジサンケイ クラシック 2002
「菊川怜ちゃんに会いたいな…」
今年3月。
先輩プレーヤーの吉村金八に会う機会があり、30分くらいの立ち話をしたときに、得るものがあった。
「亨、おまえももう35歳を越えたんだから、あんまりガツガツせず、一度、引いて戦ってみれば?」
胸に染みるものがあった。
たとえば、飛距離。
「確かに、いつまでも若手選手と、張り合う年でもない…」と、鈴木は思った。
「いったん、飛距離を落として戦えるようになれれば、そのうちまた、自然と飛距離は戻ってくるよ」と吉村が教えてくれた言葉を意識しながら戦うと、今年になって、フェアウェーキープ率がぐんと上がった。
吉村の言葉は、プレー時の“考え方”にも、当てはまった。
人一倍練習熱心な鈴木は、「これだけやったんだから、結果が出て当たり前」と、思いつめがちだった。
しかし、物事が計画どおりには進まないのが、人生。
「ゴルフも同じ。どんなに努力していてもOBも出れば、3パットもある」
今年、「出たとこ勝負」とのテーマを立てて戦うと、「失敗しても、カリカリしなくなった」
ミスのあとの、ボギーの数が、減った。
「僕にはゴルフしかない。40歳を越えても、第1線でやりたいから、今こそ、変っていかなくちゃ」
鈴木が、転機を迎えている。
2打差の3位で迎える最終日。この日のために、これまでの日々の努力は、怠らなかった自負がある。
「準備はしてきた。あとの結果は神のみぞ知る。あまり自分を追い詰めず、あとは、試合を楽しみたい」と、無欲の鈴木。
…ただし、そんな鈴木にも、ひとつだけぜひとも勝ちたい理由がある。
毎年、そのとき旬の女性タレントが、表彰式のプレゼンターを務めるのが、今大会の目玉のひとつ。
今年のプレゼンターは女優の菊川怜さん。
「彼女には、会いたいと思っているんですけど…」と言って、鈴木は照れたように笑った。