Tournament article
日本プロゴルフ選手権大会 2002
「小達さん、ありがとう!」
練習は人一倍。
だが、「やってもやっても、結果が出せない…」
諦めかけたこともあったが、それでも、あるとき、尾崎直道が言ってくれた、「1個きっかけを掴めたら、ゴルフって変るもんだよ」とのアドバイスを励みに、頑張ってきた。
「実際は、『掴んだ!』と思っては、勘違いの繰り返しのほうが、多かったんですけども…(苦笑)」
実は、今週も、「これかな?」と思える出来事があった。
それは、週の月曜日に会場入りし、たまたま、練習場に居合わせた小達敏昭が、久保谷のスウィングを見て、「そんな振り方じゃ、だめだ」と叱ってくれたことに端を発する。
そして、小達は、独自のスウィング理論を、語り始めた。
久保谷によると、小達がいわんとすることは、おおまかに言えば、次のようなことだった。
① アドレスで、手を高く(ハンドアップに)構えること。
② 球が当たる瞬間まで、体を起こさないこと。
③ フィニッシュは、高く突き上げるように取ること。
それを総じて、小達は「タイガー・ウッズのイメージで、ポコン!と振るんだ」と説明したという。
「そんなの、出来っこない、とは思ったけど、小達さんが、『騙されたと思ってやってみろ』と。それで、言われたとおり一生懸命、練習していたら、どんどん、イメージが良くなって。むかし勝ったときの良いイメージを、思い出してきたんですよ」
特に、①のアドバイスは効いた。
もともと、久保谷は、ハンドダウンに構えるタイプ。そのせいで、インパクトでクラブのトゥ側のほうのターフがより深く取れ、球は左へ曲がりやすかった。「ひどいときは、チーピンのような球」の出る確率も、高かったのだ。
小達の指導で、この週、久保谷は「自分の中の限界くらいに」ハンドアップに構えて、スウィングしていった。
その結果、「4日間、アイアンショットの不安が、ほとんどなかったんです」と効果は絶大。
ほかに、パットに関しても小達から適切なアドバイスを受けており、その教えを試行錯誤していた中での今回の勝利に、「今週の僕は、すっかり、“小達教”の信者です。小達さんには、心から、ありがとうと伝えたい」と、久保谷。
ただし、小達が与えてくれたきっかけが、久保谷にとって、“本物”であるかどうかは、まだ、これから先の話だ。
「来週、再来週もこのイメージを持ちつづけられるかどうかが問題」と、承知している。
「そういう意味でも、この優勝は、僕にとって、単なる第1ステップ。引き続き、切磋琢磨をしていくつもりです」
5年シードのビッグタイトルで頂点を極めてもなお、道のりは果てしない。