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日本プロゴルフ選手権大会 2002

・「まだ、勝っちゃだめだよ」

 思い肝臓病を克服し、Vチャンスを迎えた小山内護

 小山内の“酒豪ぶり”は、ツアーでも有名だった。
 だが、いまは、「最初の乾杯だけ。あとはすぐにウーロン(茶)だよ」
 それだけでなく、食生活も「8時以降は、一切、食事しない」など、180度、生活態度を変えるきっかけとなったのは、2年前、飲みすぎで、肝臓を患ってからだ。
 それ以前にも、いくつか兆候は出ていた。
 なんとなく、疲れやすい。
 ラウンド時は歩くのも困難で、「一緒の組の選手に、ついていくのでやっと」だった。
 ある日の朝も、なかなか起きれず、うんうん言いながら体を起こして、ベッドから、足をついた瞬間、足裏に激しい痺れが走った。
 ビックリして鏡を覗くと、顔がパンパンに、腫れ上がっていた。
 慌てて医者に駆け込むと、即座の「ドクターストップ」(小山内)。
 今すぐ酒をやめないと、ゴルフは二度とできなくなる、と宣告されたのだ。

 すんでのところで、選手生命を取り留めた小山内だったが、大好きな酒を断ったことで、少なからず弊害も出た。
 みるみる減っていく体重。昨年夏には、98キロあった体が、80キロまで落ちた。
 それまで、「体重の移動で、飛ばしていたスウィング」ができなくなり、自慢の飛距離は急激にダウン。「出るのはシャンクばかり」で、筋力が落ちたせいで、腰まで痛めてしまった。

 「体重があったころと同じ感覚で振っていると、だめだ」と小山内は、感じた。それで現在の、「右足の付け根を意識しながら、体の回転で振る1軸のスウィング」への改造に、踏み切ったのだった。

 同時に、毎日「息ができなくなるくらい限界まで続ける」腹筋運動を繰り返し、以前のパワーを取り戻そうと、頑張ってきた。
 おかげで、先週のフジサンケイクラシックでは、ドライビングディスタンス賞獲得までに、飛距離が回復。
 同時に、ショット時の曲がり幅も激減した。
 「昔は僕、1度に3ホールくらい使って、ゴルフしていたからね(苦笑)」
 99年、日本マッチプレー以来のVチャンスだが、「もっともっと、優勝争いを経験してからでないと、僕なんか、勝っちゃだめだよ」
 苦しい日々を経てもなお、自分には、もう少し試練が必要、と感じているようだ。

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