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日本プロゴルフ選手権大会 2002

「まだまだ、僕は幼稚なゴルフ」

 思いがけない勝利に、久保谷健一は呆然

 プレーオフ2ホール目。17番パー5で、先に片山が、3打目を、ピン手前4メートルのチャンスにつけた。
 対する久保谷は、グリーン手前のガードバンカー。
 キャディの渡辺宏之さんがささやいた。 「またグダグダ18番に戻っても、緊張感がなくなるし、ここで、決めちゃえば?」
 渡辺さんとは、小中時代の同級生。もう長い付き合いになる親友の言葉が、久保谷の心に火をつけた。
 「トライしてみよう」
 勝負に出たバンカーショットは、ピンまで30センチ。
 「キャディの言葉がなかったら、また、シンゴがチャンスにつけていなかったら、僕もここで安全に手前につけていたかもしれません」

 このウィニングホールを含め、「今日は、大きな運があった」と振り返る。
 たとえば、出だしの2ホールだ。
 1番で、8メートル、2番では、なんと、20メートルものバーディパットを決めた。カップ到着までに、数回曲がる難しいスネークライン。
 「せめて寄ってくれ、というのがど真ん中から入ってくれた」前日までパットに悩んでいたことが、ウソのような、展開だった。
 (「今日は、なんか違うぞ…」)
 吉兆に乗って、3打差のスタートから、ノーボギーのゴルフで、頂点まで駆け上った。

 年間2勝をあげた97年から、5年間、見放された勝利。
 ショット、パットともにいまだ試行錯誤の段階で、「まだまだ、僕のは幼稚なゴルフ、勝つには早すぎた」と、謙遜する。
 今季もこれまで、けっして調子が良かったとはいえず、「優勝なんて、信じられない」と、思いも寄らぬビッグタイトルに、戸惑いは隠せないが、「練習だけは、人一倍積んできた」との自負もある。
 「だって、ただでさえ他の面で負けているのに、練習量まで負けてたら、絶対上には、いけないじゃないですか」
 優勝直後に感じた「二日酔いみたいなふわふわした気分」も、心地よい酔いが覚めればすぐにまた、久保谷は、練習場に足を向けているだろう。

★専属キャディの渡辺宏之さん(=写真左端)の話
 「僕と久保谷は、小中時代の同級生で、もう、長い付き合いになります。普段から、「おいしっかりしろよ」とか言い合えて、今日も2人、まったく気負いなく、気楽にラウンドすることができました。
 僕は、久保谷が、97年に年間2勝した直後に、専属キャディになったので、これまで、ずっと、優勝の経験がなかったんです。初優勝は、すごく嬉しい反面、キャディの僕としても、日本プロのような大きな大会で勝てたなんて、なんだか信じられない気分ですね(笑)」

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