パニック状態で打った本戦18番のバーディパット。しかし、外して再び18番ホールで のプレー オフに挑んだとき、かえって手嶋は開き直ることができた。 「プレーオフまで来られたんだから、もういいじゃないか」。
再びはじめに決めた“諦めモード”のゴルフに戻って、宮本とのマッチプレーに挑む ことがで きたのだ。
フェアウェーど真ん中を捉えた会心の第1打は、先の72ホール目と距離も番手もまっ たく同じ 、残り190ヤードの6アイアン。ピンはグリーン左サイド。風は左からのアゲンスト。 ドローヒ ッターの手嶋には、狙いやすいシチュエーション。
「いちかばちかだ・・・」思い切って、ピンを狙った。さっきよりアドレナリンが出 て、力強い 球が打てた。グリーン左サイドに落ちた球は、傾斜を利用してスルスルっと、ピン方 向へ吸い 寄せられた。手前1メートルのバーディチャンスだ。
先に宮本が、右から7メートルのバーディチャンスを外した。やはりプレッシャーが 押し寄せ て、「どうやってバックストロークしたかわからない」というほど緊張したが、これ をしっか り沈めて激戦に終止符を打った。
2001年の日本オープン以来、ようやく手に入れた3つ目の勝ち星。先週までの賞金ラ ンクは6位 だった。1勝もせずに、トップ10入りするのは、それなりに素晴らしいことだ。しか しどれほ どに安定したゴルフを続けてランク上位に食い込もうが、やはり勝たなくては意味が ない。
自ら名づけた『未勝利選手の賞金ランキング』リストから、ようやく解放された手嶋 は「やっ ぱり、優勝っていいですよね」。どこかホっとしたように、つぶやいた。

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• 手嶋 多一