Tournament article
フジサンケイクラシック 2003
トッド・ハミルトンは優勝インタビューで男泣き
平塚哲二のバンカーからのショットには、カップ方向に手をヒラヒラと振って(もっ と寄れ)のポー ズだ。
2位タイの野仲、平塚に5打差をつけるぶっちぎり優勝。
ウィニングパットを決めて、ギャラリーに向かってクールに手を振っていたチャンピ オンが、優勝イ ンタビューでは、ふいに声を詰まらせた。
「長かった。勝てなかったこの5年間、ほんとうに長かったんだ・・・。今はただ ホっと して、とにかく 嬉しいの一言です」
身長185センチの男が、しばらく唇を噛んだまま。うつむいた頬には、うっすらと、 涙の跡がついていた。
この日最終日は4打差単独首位からのスタート。当初は「グリーンの真中狙い、セー フティゴルフでい く」と決めていたが、8番ホールで野仲に2打差まで詰め寄られた。
「野仲はほんとうに良いゴルフをしている…。安全策より、バーディだ」と、気持ち を入れ替えた直 後の2連続バーディ。さらに12番で上から2メートルのチャンスを決めて、ほぼ“安全 圏”に。
しかし、インに入っても、何打差開こうがハミルトンは警戒を緩めなかった。先に “鬼門”の16番ホ ールが残っていたからだ。
左にはグリーンまで断崖絶壁が続き、さらに強烈な打ち下ろしの16番パー5には、過 去に良い思い出 がなかった。 「風がある日はクラブ選択が非常に難しく、下手すれば球が宙に流されてOBもある。 このホールを過 ぎるまではどうしても安心できなかった」
2000年大会の3日目には、ここで“8”の大たたきをしている。そんな失敗と数々の 経験を踏まえハミ ルトンには、この16番ホールの独自の攻略法があった。
それは、あえてフェアウェーを狙わず右のフェアウェーバンカー方向を狙っていく ルート。大量リー ドにも躊躇なくその方法を取り、苦手ホールをパーで切り抜けようやく安堵。 「それってすごく、“チキンルート”だけどね(笑)」
“チキン”とは、気の弱い性格をからかうときの俗語だが、その言葉をあえて使うこ とで、ハミルトンは “川奈”の難しさを最大限に表現した。
「16番は、僕にとってそれほどまでに恐ろしいホールだったんだ・・・」