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日本プロゴルフ選手権大会 2003
日本プロゴルフ選手権大会初日は朝からあいにくの荒れ模様。単独首位に立ったのは“ボンバー・鈴木”こと鈴木亨
横殴りの豪雨の中、鈴木が笑顔で突き進む。「今日は天気も凄いけど、ゴルフも凄い!」というとおり、この日マークした“67”の内容は2イーグル7バーディの3ボギー、1ダブルボギー。パーであがったホールはたったの4つだ。
「・・・(苦笑)途中で“俺はなんちゅうゴルフしてんだ?”って、笑わずにはいられなかったよ」。
先週まで、絶不調だった。開幕第2戦のつるやオープン2日目には、同じ組で回った小達敏昭に、「そのショットで予選落ちしたら、かなりやばいよ」と言われたくらい、誰の目にもショットは絶好調。
なのに2、3メートルの距離のパッティングがことごとく入らない。「ほとんどがカップをクルっとまわって弾かれるパターン」で、その週は案の定、予選落ち。「“入らない”と思うとそのあとも余計に入らなくなって。精神的なものもあったんでしょう」以後2試合でも悩みつづけたが、「気持ちさえ切らさないで頑張っていれば、いつか自分の番が来る」と信じて耐え忍び、試行錯誤の末にようやく光が見えはじめたのが今大会、本番直前だった。
前日の水曜日。練習グリーンで所属メーカー・ミズノのスタッフにチェックしてもらいようやくその原因が発見できた。
「その詳しい内容は今週、勝ったときに・・・なんてね(笑)。簡単に言えば、打ち方が悪かったために、転がりまで悪くなっていた、ということかな」。原因を解明してようやく“晴れ間”が見えかけて 臨んだ、この日の初日だった。
スタートホールの1番で3メートルのバーディチャンスをみすみす逃したときには、「あ、やっぱり今週もダメか・・・」と諦めかけたが、次の2番で10メートルを沈めると一気に爆発した。6番でチップインイーグル。最終18番では、残り258ヤードから6メートルに乗せたイーグルパットをド真ん中から沈めた。
先週まで、「取れる気がしなかった」というチャンスパットが「今日は、“次も、また次も入るんじゃないか”って。こうなると豪雨の中でもゴルフが楽しくって仕方ない」と、声も弾む。
「そのかわりボギーの数も多いのがいけないね」と、結局トータル5アンダーには悔しがったが、この日「へこました数」(鈴木)は、先週の大会4日間でマークした数と同じ11個だ。「今日は先週1週間分を1日でやっちゃいました! ずっとイライラがたまっていたけれど、久々にボンバーしたね」と超ゴキゲンだった。
デビュー当時は、ハーフで3つのイーグルを奪って逆転勝ちなど、ド派手なゴルフで“ボンバー・鈴木”の異名を取った。
95年の今大会(第63回大会)2日目には、1イーグル6バーディ(1ボー)を奪って2日連続で65をマーク。36ホールの大会レコードの通算14アンダーで2位に7打差つけてトップに立った経験もある(最終成績は3位)。
「最近は歳をとって、長いことそういうゴルフが出来てなかったけど(笑)、今日は久々に若返った気分。昔を思い出しました」。
今月28日で37歳になる鈴木だが、今週の心持ちは、23歳のデビュー当時そのままだ。