Tournament article
東建ホームメイトカップ 2004
最終ホールで鴨に大事なものを盗まれながらも、藤田寛之が単独首位
最終ホールで鴨に大事なものを盗まれながらも、藤田寛之が単独首位
「プレー中に、たまに鴨の親子が横切ったりして、和ませてくれるんですよ」(藤田 寛之)と、激戦を繰り広げる選手たちにも、そのほのぼのとした風景が好評だが、 「たま〜に、困っちゃうときもある」(藤田)。
強風の中、この日2アンダーの好スコアで迎えた最終9番ホール。
残り103ヤードの第2打を、アプローチウェッジで手前3メートルにつけ、意気揚揚と グリーンに上がってきた藤田。マークをしてじっとラインを読んでいるそばで、 視界のはしに何やらうごめく物体 が…。
さっきまで、そばの池で泳いでいた鴨の一団だった。それがいつのまにか、列をなし て9番グリーンまで上がってきていたのだ。
はじめは笑顔でその光景を見ていた藤田の顔色が、ふいに変わった。
なんと目の前でそのうちの一羽が、マークした藤田のコインをくわえて、スタコラ逃 げ出したからだ。
「まさか、と思って見ていたら、あっという間に持って行っちゃったから、ほ〜ん と、焦りましたよ」。
バンカーに逃げ込もうとする鴨を慌てて追いかけ、くわえ落としたコインをなんとか 取り返し、無事、元の位置に置きなおすことができた。
そんなハプニングがありながら、このチャンスも沈めて通算4アンダーで、フィニッ シュ。
風の中のゴルフにめっぽう強いといわれているのが藤田だ。しかし、体もよろめくほ どのこの日の強風下でも、「特に昨日までと、何かを変えてプレーしたわけではな い」という。「変に意識しすぎると、リズムが狂う。風の合間を選んで打ったりくらいはするけ ど、それもやりすぎると自分のタイミングでなくなってしまいますから」。
むしろ強い風への対処よりも藤田が気がかりだったのは、予選カットのこと。スター ト時は1アンダー35位タイだったことで、「この風の中、ちょっとでも油断すれば危 ない。とにかく、カットラインにはもぐりこもうと必死だったんです。開幕から予選 落ちは、絶対に嫌でしたからね」と、ホールアウト後にホっとした表情で話したとき には、10位前後をさまよっていた藤田の順位は、時間がたつほどにあれよあれよと上 昇し、結局、単独首位で決勝ラウンド進出。
先週は、灼熱のシンガポールで行われた欧州ツアーのカルテックスマスターズに出場 (52位)。今週月曜に帰国して成田に降り立ち、渋滞の中、10時間車に揺られていっ たん自宅の掛川市に戻ってからあわただしく会場入りした。
まだ肌寒いコースで、真っ黒に日焼けした顔もたくましく、開幕戦から藤田が堂々と 優勝争いだ。