Tournament article
JCBクラシック仙台 2004
本戦の18番の3パットを、原動力に変えた神山隆志
本戦の18番の3パットを、原動力に変えた神山隆志
プレッシャーには、目をつぶらない。「あえてマイナス思考を、全面に出していった」。
本戦の18番。残り99ヤードの第2打を打つ直前に、1打差の単独首位に立っていることを知った途端「アドレナリンが出た」。ピン右横に置くつもりのショットを大きくオーバーさせて、奥10メートル。下りの難しいバーディパットを残してしまった。ファーストパットは2メートルもオーバーさせて、返しも外し、3パットのボギー。自ら、プレーオフに足を突っ込んでしまったその悔しさは、あえて引きずったままでいた。そして、その1ホール目の18番ティグラウンドでもういちど、自身への不甲斐なさを思い出したのだ。
「…さっき2パットのパーにしておけば、とっくに勝てていたのに、ふざけんな!!…くらいのイメージで。気持ちを引き締めていったんです」。前ホールのミスパットを勝負への原動力に、中嶋、近藤とのサドンデスにのぞんだのだ。
前週まで、立っていられないくらいひどい腰痛に悩み、今回は欠場も考えていた。開催週の月曜日に痛み止めの注射を打ってどうにか軽減されたものの、初優勝はおろか、予選通過のイメージさえわかないという状況だった。
だから、2打差3位からスタートした最終日。4番でティショットをがけ下に落としたときも、日体荏原高の後輩で、今週キャディの千光寿さんに向かって思わず苦笑いで、言ったのだ。
「結局、最後には今回のことも『良い経験になった』とか、言ってんだろうなあ…」。
と、すぐさま千さんは、こう切り返してきた。「ここで終わりにしちゃ、もったいないです」。
この言葉が、神山の気持ちをつないだ。がけ下から、2度斜面にショットをぶつけて、ようやくフェアウェーに脱出。どうにかボギーで切り抜けたこのパー5が、ターニングポイントとなった。
続く5番で第2打を5メートルにつけてバーディ。7番パー5では、ブラインドになった残り209ヤードの第2打を、スプーンで40センチにピタリとつけてイーグルだ。これでトップに躍り出た神山は、そのまま勢いに乗り、Vロードを突っ走っていったのだった。