Tournament article
アコムインターナショナル 2004
鈴木亨「今週、パパはきっと勝てるよ!」娘と、家族の応援に後押しされてつかんだツアー通算7勝目
“最終日は、どっちのウェアがいいと思う?”
と、娘からすぐに返事が帰ってきた。
“絶対にオレンジ! 今週、パパはきっと勝てる気がする。頑張って!”
「…女房も、絶対にオレンジのほうが縁起がいい色だって。何を根拠に言ったのか分からないけれど、娘は今回の優勝を予言していた」。
ヒビが入りかけていた家族の絆を、いっそう強くしてくれた今回の優勝だった。
愛娘の愛里ちゃん(10歳)が、モーニング娘。を中心とするアイドル集団「ハロー!プロジェクト」のキッズオーディションで、応募総数27958人中15人の難関を突破したのは、2002年の6月のことだった。
そして昨年の10月29日には、「あぁ!」というユニット名でシングルデビュー。
幼いころから大人顔負けの歌唱力。3回も歌詞を聞けばすぐに覚えてしまい、それに振りをつけて踊っているような子だった。
「その才能を伸ばして、夢に向かって歩いていって欲しい」。当時は父親も、娘の芸能界デビューに大賛成のはずだった。
だがシーズン中盤の自身の不振で、こんなセリフを吐いてしまったのは今年の夏。
「娘と、俺とどっちが大事なんだ」。
まだ幼い愛里ちゃんの芸能活動には、親のサポートが不可欠だ。当然、妻・京子さんは娘に付きっ切りとなる。特に、鈴木が予選落ちして帰った土日に、愛里ちゃんに仕事が入ることが多く、すれ違いの生活。
苛立ちから、つい妻にそう怒鳴って泣かせてしまったのだ。
「世界は違うけど、お互い頑張りたい」その一心で、家族みんなで励ましあってやってきたはずだったのに。
京子さんには「…あなたがいやなら、(芸能界を)やめさせようか?」とまで、言わせてしまったこともある。
我に帰って、「そんなこと、させられるわけがない」と、鈴木は心を入れ替えた。
何回か、娘のコンサートを見に行ったことがある。熱狂的なファンの前で堂々と、歌い踊る姿に「俺の娘じゃないみたい・・・」成長ぶりに目を細めたものだ。
ツアーきっての愛妻家で、子煩悩。家族の存在が鈴木の戦う原動力だ。
その家族が、危機を迎えている…。
再び、信頼関係を取り戻すため「原点に帰って」取り組んだのが、この夏の筋力トレーニングだった。