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〜全英への道〜 ミズノオープンゴルフトーナメント 2005

高山忠洋「お兄ちゃんも、頑張っているよと伝えたい」

グリーン左手前から第3打のアプローチをOK距離につけて、通算11アンダーにした18番。
「たかやま〜、ボールくれよ〜!!」。
満員のスタンドからかかった掛け声に、足を止めた。
来た道を、少し後戻りしてキャディの東勝年さんからボールを受け取る。再び、観客席に向き直る。
「誰やったっけ?」。
もういちど、相手をちゃんと確認してから、声のするほうへ投げ込んだ。

話しかけられると、必ず笑顔になる人の良さがある。
「・・・いやぁ僕の中では、自分のゴルフに腹を立てていたり、機嫌の悪いときもたくさんあるんですよ」と言うが、他人にはそんな素振りをほとんど見せない。
どんなときも、周囲への気配りを忘れない。

この日の好スコアも、そんな優しさを積み上げた64だった。

前日2日目は、パッティングに苦しんで、4位から19位に後退した。
「打ち方は悪くない、でも読みが間違っていた」。
海からの強風が吹き荒れたこの日3日目は、「野生の勘」で勝負した。
地面を這い上がってくるような風が、パッティングにも影響していた。

「風の計算も入れると、とても読みきれないから。今日は見たまま信じたまま。深く考えすぎずに、打つようにした。それが入ってくれて・・・再び良い位置に戻って来られた」。

ボギーなしのラウンドは今年5回目。この強風の中で、「大満足」の8アンダー。

練習日の21日(火)、尾崎直道、S・K・ホ、藤田寛之らと地元笠岡市の児童養護施設『悲眼院』を訪問した。
澄んだ瞳をした子供たちと、一緒になってゴルフを楽しんだたった数時間のうちに、情がわいた。
「帰るころには、なんだか寂しくなっちゃって」。
中には、親のいない子もいると聞き、「なんとかしてこの子たちを元気づけたい」と、強く思うようになっていた。その思いに突き動かされて、この3日間を戦ってきた。

最終日は施設の子供たちが、トーナメント観戦にやってくる。
「あの子たちの前で優勝争いがしたい。『お兄ちゃんも頑張っている』と思うことが、あの子たちの勇気になってくれればいい」。

有言実行の最終日、最終組。
18番で、笑顔の再会を果たしたい。

  • 練習日の施設訪問では、子供たちとスナッグゴルフを楽しんだ

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