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アンダーアーマーKBCオーガスタ 2006

河井博大が単独首位浮上

以前の河井なら、それですっかりペースを崩していたかもしれない。この日2日目の朝のことだ。予定どおり、河井が6時に福岡市内のホテルを出ると、外で同期の桧垣繁正が立ち往生していた。

車のエンジンがかからないのだという。しかし、河井にもどうすることもできず「お先に」と言い置いて出発。

と、5分もたたないうちに携帯電話が鳴った。
「やっぱりかからないから。戻ってきて一緒に乗せていってくれ」と、桧垣はいったのだった。

ちょうど高速に入る直前だったが慌ててカーナビを設定しなおした。
引き返しホテルに車を横付けした、ちょうどそのとき。
「エンジンがかかったわ!」と、桧垣。
どうやらハンドルロックになっていたらしいのだが「どないやっちゅうねん!」。
早朝から思わず芸人風の突っ込みを入れたくなる「ドタバタ」劇だった。

おかげで予定より20分ほどコース到着が遅れてしまったが、「まあ、コーヒーを一杯飲み損ねた程度のロス」と笑って言えるのも、師匠のおかげかもしれない。

地元・広島県の瀬戸内高のひとつ先輩、田中秀道が河井にいつも口を酸っぱくして言うことは「バカになれ!」ということだ。

何事も突き詰めて考えすぎるタイプ。
ことゴルフに関してその傾向が強く、コースに出てもスイングの形ばかりにこだわってしまう。
2001年に初シード入りを果たすも、翌年にはすぐに手放してしまったのもそのせいかもしれない。
そんな河井に、「せっかく良いものを持っているのに、自分でフタをしている」と、たしなめてくれたのが秀道だったのだ。

「もっと笑って、もっと喋って、楽しくゴルフしろ。そして、いったん構えたら何も考えず、青空に向かって思い切り打て!」。

秀道の声は「神の声」と、尊敬してやまない河井にとって、それはいつしか座右の銘となった。
それまでの性格と正反対といっても良い“性格転換”に初めは戸惑いもあったが、最近ようやく秀道の言うように、「のびのびとゴルフができるようになってきた」という。

「ミスしても、引きずらず、今日も最後まで思い切ってやれた」。
ボギーなしの8アンダー63は、コースレコードタイに「気分は最高!」と暑さも忘れて爽やかに笑った。

河井博大(かわいひろお)
1971年11月13日生まれ、広島県出身。地元・瀬戸内高では田中秀道の1つ後輩。
卒業後、すぐに研修生となりプロの道を選んだ秀道に対し、河井は名門・日大に進学。96年にプロ転向した。

翌97年にツアー出場権を手にし、会場で再会したころには、秀道は「すでにスターになっていた」(河井)。
以来、秀道を師匠と慕い、さまざまなアドバイスを受けてきた。
「目の前に写真があれば、拝みたくなるくらいに尊敬している」という河井にとって、その影響力はかなり大きいようだ。

「秀道さんのようにはなれないけれど、できるだけ近づきたい」と話す。
そのためにも、ファイナルQTランク47位の資格でツアー出場権を取り戻した今季は、このままぜひシード権の奪回といきたいところだ。
身長181センチ、体重70キロ。

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