Tournament article
アサヒ緑健よみうり・麻生飯塚メモリアルオープン 2006
ディフェンディングチャンピオン・矢野東
3人の意思に反して、それが世間の目だ。
そして本人たちも、そんな言葉とは裏腹に本音の部分ではやはり、いろいろな意味でも互いに気になる存在であることは間違いないようだ。
先日、矢野がこんなことを言って苦笑した。
「・・・それがさあ、最近、仲良くなっちゃったんだよね」。
実は矢野は、学生時代から星野とあまり親しく話をしたことがなかった。
アマ52冠を誇る王者と「俺とは格が違う」という畏怖の念に加えて、星野はもともと、あまり自分から話しかけてくるタイプではなかった。
逆に、人懐っこい性格の近藤とはゴルフのことだけに限らず、ファッションや髪型のことなど語りだしたら止まらない。
いくらでもハナシが弾むのに、星野とはたまに同じ組になっても沈黙ばかりが続いてしまう。
「きっと、俺のことなんか相手にもしていないのだろう」と、矢野はずっと思っていた。
「とっつきにくい性格だな」と、感じた。
「・・・ゴルフが上手いから、お高くとまっているのかもしれない」とも。
しかし「実はそうではなかった」と、分かったのがついこの間のこと。
たまたま、食事を共にする機会があった。
そのとき思いがけず話が弾み、これまで持っていた星野の印象が完全な誤解だったことに気付いたのだ。
「本当は、凄く良いヤツだって、分かったんです」と、矢野は言う。
「多分、ちょっと人見知りが強いだけで、それがクールな印象を周囲に与えてしまうんだな、と。実際はもの凄く熱いものを持っている男だと分かって、嬉しくなっちゃいました」と、打ち明けた。
・・・と、ふいにキョロキョロと周囲を見渡して声を潜め「でも、このことは近ちゃん(近藤の相性)には内緒だよ。俺が星野と仲良くなったって知ったら、嫉妬しちゃうかもしれないからね!」。
3人の人間模様をユーモアたっぷりに話す矢野の様子に、周囲は笑いに包まれていた。
その近藤が今年9月のANAオープンで、さらに10月のコカ・コーラ東海クラシックで星野が待望のツアー2勝目。
「あいつらのことだけじゃなく、俺はもともと、他人のことは気にしないタイプ」とは言いながらも、やはり2人に負けられない思いは人一倍。
3週前の日本オープンで単独2位。その翌週には米ツアーに初参戦を果たし、「自信」という手土産を持って帰国した。
そして、先週のABCチャンピオンシップでは2日目に単独首位。
最終日こそ崩れた(9位タイ)が、ディフェンディングチャンピオンがいま、もっとも勢いのある選手の一人として今週、思い出の舞台に帰ってくる。