Tournament article
セガサミーカップゴルフトーナメント 2006
葉偉志(よう・いし)が「大好きな北海道」で、ツアー通算2勝目
「いかに大きな獲物を釣るか」と、寝ても冷めてもそればかり考えた時期がある。
海、川、池。あらゆる穴場を探し歩いた。
前日、頭の中で絶好のポイントに、釣り針を投げ入れる瞬間を想像する。
「明日はどんな魚が釣れるだろう」と、考えただけでワクワクした。
知人に「そんな若い頃から釣りばかりやるもんじゃない」と諭されて20歳で“引退”したが、プロゴルファーになってもその姿勢は同じ。
普段の温和な表情から想像もつかない。コースでも強烈なチャレンジ精神が顔をのぞかす。
どんなにリードしようとも、攻める気持ちは失わない。2打差で迎えた13番パー5。
グリーン手前に大きく口をあける池。
残り230ヤードの第2打は、安全に刻んでも良かったが「僕はいつでも、挑戦することが大好きだから」。
迷わず、ピンを狙っていった。
その結果、ボールは池に沈んだが、ピクリとも表情を変えなかった。
打ち直しの第4打はピンそばにピタリ。
あっさりとパーで、しのいでみせた。
さらに差を広げて迎えた上がり3ホールこそ、容赦なかった。
アイランドグリーンの16番パー3は、8アイアンでピン4メートル。
17番は、残り130ヤードを9アイアンでやはりピン4メートルにつけた。
グリーン手前に池が横たわる最終18番パー5も、もちろん2オン狙い。
残り231ヤードの第2打は、4アイアンで楽々と手前のカラーまで運んでいった。
3連続のバーディフィニッシュで2位以下を徹底的に突き放して頂点に立った。
豪快なショットを生み出すしなやかな筋肉は、3年前から専属トレーナーについて始めたトレーニングの成果だ。
この週、3番と18番で計測されたドライビングディスタンスで4日間平均306.63ヤードを記録して堂々1位。
飛距離と小技の絶妙なマッチング。
専属キャディの桜井久士さんと「今日はスコアボードは絶対に見ない」と決めていた。
「破ったら罰金」との約束を貫いて、最後までノンプレッシャーで戦い抜いた。
最終日はボギーなしの、完璧な内容でつかんだツアー2度目の栄冠は、2003年のANAオープンに続いて、やはり北海道での大会だ。
寒冷地特有の洋芝は、2000年から3年間戦った欧州ツアーとどこか似ている。
吹き付ける強風も、母国・台湾で慣れっこだ。
一生懸命に覚えた日本語で、地元ファンの前で精一杯の優勝スピーチ。
「ホッカイドーはコースもナイス、天気もナイス、人もナイス・・・ダイスキです!」
道内3試合に勝てばもらえる1000万円のボーナス『ゴルフ北海道スイング』の一番手に名乗りをあげた。
また、来年の今大会で連覇を果たせば、さらに2000万円。合計3000万円が手に入る。
「・・・それはイイですねぇ、ガンバリマショウ!!」。
次なる“獲物”が定まった。