Tournament article

日本オープンゴルフ選手権競技 2007

石川遼くん「これが、あと2日も続くなんてすごい幸せ」

16歳のスイングの思い切りの良さはよく取り沙汰されるところだが、52歳が特に絶賛したのはアプローチだった。この日10日(水)、石川くんと練習ラウンドを行った中嶋常幸は広くスタンスを取って、生い茂るラフから柔らかいタッチで難なく脱出してみせる様子に舌を巻き、「遼くんのアプローチが大いに参考になった」と、てらいもなく言った。

石川くんのさわやかな立ち振る舞い、ハキハキとした物言いにも完全にノックダウン。
「言葉遣いは知性。彼は、それがにじみ出ていてすがすがしい。人と話す姿勢だったり、受け答えが素晴らしくて。思わず頑張れ〜!って応援したくなっちゃった」という中嶋は、ラウンド中に自らのゴルフ人生を余すところなく伝授する大サービスぶりだ。

ジュニア時代から始まって、プロ転向したときのこと。全盛期。ギアがパーシモンからメタルに変わったときの苦しみ。スランプに陥って、スイング改造に踏み切ったときのこと。そして、最愛の父の死…。
「いろんな話ができて良かった」と、ご満悦の中嶋がこの日一番の笑みをこぼしたのはこんな会話を交わした瞬間。

23歳で初めてマスターズに出場したときのことを語り、「遼もがんばれ、お前はグリーンジャケットを獲れ」と語るなり「ハイっ!」と元気な即答が返ってきたのだ。

「彼の夢の中にマスターズの優勝がある…。その答えが何より嬉しかった」と、振り返る。

マスターズの優勝は、石川くんがゴルフをはじめたころからの夢だった。
「それを忘れたことはないから、中嶋さんの言葉にも、すぐにハイと応えられた」という。
「自分的には全然まだまだだと思うけど、アプローチに目をつけてくださったことも嬉しい」と、目じりを下げた。

そしてこの日、18ホールに付き合ってくれたベテランには感謝感激。
「中嶋さんは、心技体のひとつでも欠けたらそこに負担がかかってしまうと。三位一体じゃないと、良いスコアにならない、と教えてくださった。後は俺から盗めという感じ。…すべてにおいてレベルが高くて、盗めないけど」と、謙遜した。

和気藹々の1日を過ごした2人は、翌11日(木)から始まる予選2日間も同じ組でプレーする。
石川くんは「これが、あと2日続くなんてすごい幸せ」と話したが、ひとばび本戦に投入すれば、同じ舞台で戦うライバル同士だ。

「明日からは、自分のことで精一杯。コースとどう戦うかで頭が一杯」と中嶋がいえば、「バーディから逃げない。どんどんチャンスを獲っていく」と、石川くん。
36歳差の2人が、そろって戦う男の顔になった。

関連記事