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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2007
石川遼くんは21位に後退
「今日は良いところがひとつもなかった。ひとつひとつのショットに余裕を失い、最後まで自分の世界に入ることができなかった」と振り返ったのは、初めての最終組に緊張したのもあるかもしれない。
「今日は気持ちをコントロールするのが難しかった。こういう気持ちになったことがない」としょんぼりとつぶやいたのは、同組の片山に圧倒されたせいもあったかもしれない。
「片山さんは、常に最終組とセットのイメージ。そこに自分もいるんだな、と思ったら思い通りのスイングが出来なくなった。自分との差を目の当たりにするから、片山さんのことは見ないでおこうと思ったけれど・・・」。
欲求に負けてつい、目が引き寄せられる。
「何打離されようが死ぬわけじゃない。それなら見たほうが勉強になる、と思ったけれど・・・」。
3年連続賞金王のゴルフは、見れば見るほど力の差を思い知らされた。
2.5メートルのパーパットを外した8番で、片山はチップインバーディを奪った。
右ラフから片山がチップインイーグルを決めた17番パー5は、「僕は、ほとんど同じ距離からどショートした」。
花道からのアプローチを寄せ切れずに肩を落とした。
この最終戦でツアー8戦目。
「今年、何度か出させていただいて、プロの方に少し近づけたかなと思っていたけれど。勘違いだった。片山さんは、100段くらい上。学べるところがないくらい違っていた。こんなに、差が出るものか、と・・・」と、口から出るのは泣き言ばかりだ。
しかし、「納得できない」と悔しがったこの日のラウンドにもやっぱり収穫はある。
苦戦しながらも、4オーバーで堪えられたこと。
初めて最終組で回れたこと。
そして、たとえそれがスコアを崩した原因だったとしても「憧れの人」と同組でプレーできたこと。
17番で、片山に聞かれた。
「マスターズには、何歳で出たいと思ってる?」。
「20歳です」と即座に目標を口にすると、「君なら、きっと行けるよ。俺も君が出ているところを見てみたい」と片山は言った。
「そのために、いま自分は何をすべきか。焦らずに、決めたことをやっていけば必ず実現できるよ!」と、言われて「感動して泣きそうになりました・・・」。
インタビューで石川くんについて聞かれた片山は「プロとアマでは比べようがない」と前置きした上で、こう語っている。
「凄いと思う。僕が16歳のときに彼とやったら、100回のうち2回しか勝てないと思うし、まず彼がここに出ていること自体が凄い。でも今日は、僕と一緒に回ったことで、彼のほうでもいろいろ感じてくれたんではないでしょうか」。
石川くんは、片山のプレーから片時も目が離せなかったと話したが、その片山もまた食い入るように、石川くんのプレーを見守る場面が何度もあった。かたらわでハイレベルな戦いを続けながらも、16歳のことをちゃんと見ていた。
「片山さんは悔しいときにクソ〜って思い切り叫び、納得できたときによっしゃ〜って叫ぶことで、気持ちの切り替えをしているように見えた。ガッツポーズも、すぐに吹っ切って次のショットで集中するためだと感じた」と、石川くんはあとで感想を述べたが賞金王にとって、この日繰り広げたパフォーマンスのすべてが、16歳へのメッセージだったのかもしれない。