Tournament article

UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2007

片山晋呉は、竹本との接戦を制して「まさにゴルフは格闘技!」

Paul Lakatos/UBS
18番で賞金王が2度吼えた。第2打がグリーンをとらえた瞬間と、最後のパーパットを決めたとき。ピンまで残り190ヤードは「まるでニラみたいなラフだった」。去年までならきっと絶対に届かない。絡みつく芝をものともせずに、8アイアンでピン左10メートルに乗せることができたのは、厳しいトレーニングの成果だ。

「ピンに重なって飛んでいく率が年々高くなっている」。
どんな状況でもほぼ狙いどころに打てる。精度の高いアイアンショットは世界を目指し、磨きに磨いてきたらからこそだ。

ウィニングパットを決めて、獣のような雄たけびが再び宍戸の森にとどろいた。
竹本直哉の猛追を振り切って、今季のツアープレーヤーNO.1の座についた。

「こんなに最高にドキドキしたゲームは久しぶりだった」と振り返る。
序章は、この日最終日の1番パー4だった。
残り107ヤードの第2打は、「アプローチウェッジで109ヤード打って戻そうと」。
狙いどおり、バックスピンでチップインイーグル。

一気に4打差つけたが、楽勝ではなかった。
まだシード権すら持たなかった竹本が、しぶとく食らいついてきたからだ。

息詰まる接戦に、後半から異常なまでに喉の渇きを覚えた。
頭がぼうっとして、足がふらつく。
水や氷で首筋を冷やしても、いっこうにおさまらない。
どうやら熱中症の症状が出ていたが、そんな体の異変に逆にいっそう気合が入った。
「そうでなければ、本当に倒れてしまいそうだったから」。

16番パー3で8メートルのバーディパットを決めていよいよ3打差。
渾身のガッツポーズももつかの間。
17番で、竹本が奥から12ヤードのアプローチを入れてバーディを奪い、再び2打差。
そのとき一瞬竹本が見せた、睨みつけるような鋭い視線を今も忘れない。

「ゴルフは格闘技」。
改めて、そう痛感させられた。
辛くも1打差を死守して「今日はたまたま僕が勝ったけど。いまの男子ツアーはレベルがどんどん上がって、誰が勝ってもおかしくない。今日だって、竹本くんが勝ってもおかしくなかった」。

史上稀に見る好ゲームを制した充実感。
やっと掴んだ“4つ目”のタイトル。
日本オープン、日本プロ、日本シリーズと、この日本ゴルフツアー選手権。
これで“日本”と名のつく現行のトーナメントを総ナメだ。

いま一番の目標は「世界メジャーで優勝争いすること」。
それほどの夢を追いながら「この大会の優勝がないなんて、そんなの本物じゃない」。
ずっとそんな引け目があった。

今年4年連続の賞金王を狙うというのなら、このUBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズは絶対に譲れない。
夢にまで見た念願のタイトルに、これでまたひとつ胸を張れる。

今大会タイトルスポンサーのUBSグループのマーク・ブランソン証券会社最高責任者から託された優勝カップは表彰式が終わっても、いつまでも離さなかった。
「重いでしょう」と、心配したスタッフが声をかけても首を振る。
記念撮影も済んで、記者会見場に向かう道のりも、どこに行くにも自らの手で運び、途中何度も口づけた。

大会主催の日本ゴルフツアー機構会長の島田幸作より着せ掛けられたグリーンのチャンピオンジャケットも脱ぎたくなかった。
「今日はこの格好のまま寝たいくらい!」。

18番ホールには、母・節子さんや女子プロで妹の真里さんほか、支えてくれたたくさんの仲間が祝福に駆けつけたがツアー通算22勝目の胴上げは断った。
「25勝のときにして欲しいから」。
永久シードが与えられる通算勝ち星まであと3つ。
そのときこそ改めて宙を舞う。



  • 片山との大接戦に竹本(右)は「こんなに面白いゲームは初めてでした」と…

関連記事