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UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2007
片山晋呉が練ったツアーNO.1タイトルを取るための秘策とは・・・
ここ宍戸ヒルズカントリークラブで大会が行われるようになって5年目。
開催前に、いやというほど練習ラウンドを重ねた年もある。
有言実行が身上だった。
しかし照準を置いて周到に準備を重ね、完璧に仕上げてのぞむほど、ここではあっけなく跳ね返された。
「僕には、2週前の全米オープンより難しく感じる」そうため息をついたのは大会前日の水曜日。
なんだか、やる気がなさそうだった。
言葉には覇気もなく、口数も少なくどことなく暗い雰囲気。
普段、憎たらしいまでに自信満々の片山とはまるで違って見えたものだがそれこそが勝つために、綿密に立てられた作戦のひとつだった。
「ゴルフはこれ以上、変えるところべきところが見当たらない」。
その分、これまでの習慣を徹底的に変えることで、まるで八方塞りの状態から脱出を試みたのだ。
宿泊先を変えた。コースまでの道のりもこれまでと別ルートを辿り、直前までの10日間は、あえていっさいクラブを握らなかった。
初の賞金王に輝いた2000年の途中から、トレードマークになったテンガロンハット。
それを白いハンチング帽に変えたのは大会2日目。
試行錯誤の末に、ついに単独首位で迎えた最終日は、さらにごついサングラスをかけて完全に別人になりきった。
それでもまだ心配で、この日キャディバッグにひそかに詰め込んだのはやっぱり黒のテンガロン。
「並ばれるか、逆転されるか。そうなったらもういちど、流れを変える意味で戻すつもりだった」と打ち明ける。
しかし、結局その必要もなかった。
竹本とのデッドヒートも最後まで、この日は一度も首位を明け渡すことなく頂点に立った。
パッティンググリーン横の小屋でアテストを済ませ、再び登場した18番グリーンではすっかりいつもの片山に戻っていた。
4日間合計1万9179人は、大会史上最多となる大勢の地元ギャラリーを前に“衣装直し”。
改めて“カウボーイシンゴ”の登場だ。
「・・・やっぱり、僕にはこれが似合うのかな、ってね」。
照れたようにそう笑い、ハットのツバをそっとつまんだ。
※優勝した片山には優勝賞金3000万円のほか5年間のシード権と、8月の世界ゴルフ選手権「ブリヂストンインビテーショナル」の出場権が贈られます。