Tournament article
東建ホームメイトカップ 2008
選手会長が2008年のチャンピオン第一号に
ひとつ後ろの最終組で回る手嶋多一は、16番を終えて通算6アンダー。
「早く手嶋さんの17番のスコアが見たい」と、宮本は思った。
目の前の1打は、絶対に決めておかなければならないパットなのか。もしくは、パーでも良いと思いながら打つか。相手のスコア次第で心構えも全然違ってくる。
しかし、電光掲示はなかなか切り替わらない。
17番はパー5だ。「きっと、手嶋さんもバーディを取ってくる」と、覚悟を決めた。
慎重に読んだラインはストレート。「入ったらうれしいな、という距離」。
ド真ん中からねじこんだ。
握りこぶしを突き上げた。
選手会長が、今季初戦で逆転V。まるで「筋書きどおり」の展開に「最高ですね」と喜びつつ、優勝スピーチでは思わず「スミマセン!」と謝った。この日詰めかけた15,262人の大ギャラリーは「みなさん、石川くんの優勝を期待されていたと思うんですが…」。
かくいう宮本も、実はそれを願っていた。
3打差の4位タイにつけた前日3日目に「遼くんが勝つのが一番良いんじゃないか」と言ったのは「遼くんが勝てば、男子ツアーはますます盛り上がる」と、思ったからだ。
石川くんと首位タイに並んでいた手嶋には、「空気読めよと言っときます」と、冗談を言ったくらいだった。しかし、いざコースに出たらそんなことは瞬時に頭から吹き飛んだ。
「必死でパーをセーブしながらプレーしていたら、最後にチャンスが来た感じ。空気を読まなかったのは、実は自分でした」と頭を下げた。
表彰式で、大会主催の東建コーポレーションの左右田鑑穂・代表取締役社長が言った、「石川選手のおかげで大会は最高に盛り上がりました」という言葉に、チャンピオンも異論はない。
石川見たさに集まったギャラリーは、4日間のべ2万9072人。
最終日は7時の開門から、途切れることのない人の波。
1番ホールのギャラリースタンドは、早朝のうちにすべて埋まった。
大歓声に送り出されて、プロ魂が騒いだ。
「僕を見にきてくれたわけではないとはいえ、たくさんの人の前でより良いショットを打ちたいと思ったり、あと5センチ、ピンを狙おうと思ったり…。今日はやってて本当に、楽しかったから」。
大勢のギャラリーに見られているという感覚が、好プレーを引き出した。
「遼くんのおかげです」。
16歳へのてらいもない感謝の言葉が自然とこぼれ出た。
「来週からが、ほんと楽しみ。この盛り上がりが続くよう、僕らも頑張っていかなければ…!!」。
2008年度の選手会長が開幕戦でのツアー通算7勝目に、ますますその自覚を深めた。