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東建ホームメイトカップ 2008
小山内護「遼には、絶対に負けない」
朝から降りしきる大雨が、ちょうど抑止力になった。
「下が濡れているからしっかり打たないと届かない。慎重になったのが好かった」。
この難コンディションでボギーを打ったのは、カジュアルウォーターで斜面にドロップするしかなく、左に引っ掛けた10番パー5だけ。
毎年、スロースターター。開幕戦はいつも出遅れるのが常だったが、初日の3アンダー暫定首位タイは「上出来だよ! お天気だったら、間違いなくやっちゃってるとこだった」。あいにくの雨も味方につけて、好スタートだ。
今年は、頼もしい相棒もいる。
元・ヤクルトスワローズの鈴木健内野手。
10年来の親友には現役時代に何度か担いでもらったことはあったが、昨年9月の現役引退されたのを機に、小山内のエースキャディとして“本格デビュー”することになったのだ。
もっとも当初、小山内には「まったくその気はなかった」。
相手は1学年上のスター選手だ。
「たまにならいいけど、ずっとやってもらうとなるとやっぱり真剣にやってもらわなくちゃいけないでしょう。そうなると、こちらも気を遣うから…」。
しかし、鈴木さんは小山内のそんな気持ちもお構いなし。
このオフの合宿に誘ったときのこと。
てっきり小山内は、鈴木さんも一緒にプレーするだろうと思っていたのだが、なぜかクラブを持っていない。
「今回は、キャディとして来た」という。
挙句のはてに、夜は小山内の部屋にやってきて手帳を広げ「今年は、今のところダメなのはデサント(5月のマンシングウェアオープンKSBカップ)くらいかな」。
勝手にスケジュールまで決めていたのだ。
「キャディの仕事はほんとうに大変だから」と、なんとか思いとどまらせようと試みたがムダだった。
なんと小山内のバッグを担ぐために、テレビ解説の仕事も、コーチのオファーも断ったと聞いて、さすがに承諾せざるをえなかった。
押しかけ女房の働きぶりは、プロキャディに比べたらやはりまだまだ。
それでも、長く一流のスポーツ選手として活躍してきたその精神力には目を見張るものがある。
内心は「そんな甘いもんじゃない」と苦笑いでつぶやきつつ、「俺が優勝させてやる!」と言ってくれる鈴木さんが心強い。
石川遼のデビュー戦で盛り上がっている開幕戦。
何度か、ジャンボ邸でのオフ合宿で顔を合わせて「あいつは若いのに、すっごく人間出来ていて。素直でマジメだから俺も大好き」とベタ褒めしつつ、「遼には、絶対に負けない」。
20歳も年下の16歳に、ライバル心をむき出した。