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日本オープンゴルフ選手権 2008
石川遼が単独2位
「だって前の組からどっかんどっかん・・・。凄いのが聞こえてくるからさぁ」。
まるで大砲のように轟くギャラリーの大歓声が、ツアー通算25勝の偉業を狙うリーダーをして「ひょっとして遼くんに並ばれているかもしれない」との畏れを抱かせたものだ。
この日のパーオン率は2位(61.11%)。
パーキープ率1位(94.44%)。
平均ストローク1位(65.78)。
数字が何より物語る。
狭いフェアウェイも、100ミリを越えるラフも恐れなかった。
小さく速く、複雑にうねるグリーンも果敢にピンを狙った。
前日3日目に前半の9ホールで41を打ち、コースに打ちのめされてなお決意は揺るがなかった。
「全ホール、ドライバーで打つ」。
頑固なまでに貫いたその作戦が間違いではなかったことを、最終日に改めて示してみせた。
341ヤードの12番パー4のティショットは1オン狙い。
わずかに右に外したが、どこまでも大胆で、胸のすくようなゴルフとは対照的に、どこからでもパーを拾うパッティングが光った。
5番で3メートル弱をしのぎ、8番で5メートルを入れた。
10番、11番で2メートル。
14番で、バンカーから寄せた1メートルをパーで切り抜けた。
17番では2メートル弱。
攻守もがっちり噛み合って、難しい古賀のバック9をスコアカード通りに仕上げた。
「スイングが相当磨かれた1週間。上達したなと感じた。実力以上のゴルフが出来た」。
自分のゴルフに納得する一方で、現実をしっかり見据えた。
片山との差は4つ。
しかし「それ以上に遠い4打差。本当は20打くらいある」。
ひそかに「通算2オーバーで上がれたら、チャンスがあるかもしれない」と、考えた瞬間もあった。
片山とて人間。「4日間持つとは・・・。もしかしたら、オーバーパーのグループに入ってくるかも、と思っていた」と、打ち明ける。
「しかし、片山さんにはそれがなかった」。
どこにもスキは見あたらなかった。
今の自分のすべてを出し切っても追いつけない。
「僕が絶好調で、やっと4打差」と息を吐いた石川の目には、片山が余裕しゃくしゃくと逃げ切ったように見えて仕方なかった。
24歳のときの片山の「ゴルフ日記」。
そこにはこの日のツアー通算25勝を予言する一文こそあったが、海外メジャーへの視線はまだなかった。
「20歳でマスターズ優勝」との目標を掲げる石川の志の高さは、当時の片山よりむしろ上だが実力の差は歴然と、この日のストローク差と重なる。
「片山さんは、このコースは運だけでは勝てないとおっしゃっていたが、それを証明したのが凄い。人一倍努力しないと一生、追いつけない。何が足りないのか・・・。比べるのも失礼ですね」。
国内最高峰の舞台で「片山さんのすぐ下にいるというのは光栄です」と言いながらも、単独2位に満足してはいられない。
世界メジャーの前に、越えるべき壁はいくつもある。
「今週、出来たことが来週も出来るか。どれだけ底上げをしていけるか、です」。
17歳の挑戦は続く。