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ブリヂストンオープン 2008
矢野東「トップにいられることが、いまはとにかく嬉しい」
しかしそうは言いながら、15番パー4で残り145ヤードの第2打を8番アイアンで、ピンそば10センチ。
そして最終18番パー5も131ヤードの第3打を9番アイアンで、手前1メートルのバーディチャンスにつけてみせた。
この日グリーンを外したのは6番パー4だけ。
「昨日から、完璧に打てている」というショットはボギーを打つ気配すらなく、4番のバーディで首位を捉えると「2位以下を、出来るだけ突き放してやろうと思った」との言葉どおりだ。
前日初日に引き続き、2日連続の記者会見に「ただいま」と、にっこり笑って席に座った。
通算13アンダーは2位と3打差に、「トップにいられることが、今はとにかく嬉しくて」。
先週まで7試合連続トップ10入りを続けている絶好調男は無邪気に言った。
「これまで7試合の中でも、今週は一番調子が良い。何事にも動揺することなくイケイケです」。
破竹の勢いに、初の賞金王獲りを公言したのは2週前だ。
ANAオープンでツアー2勝目をあげて、翌週のアジアパシフィック パナソニックオープンで谷原秀人と優勝争い。
わずか2週間で一気に5000万円を稼いで、その気になった。
「今年初めは漠然と、なんとか1億円以上稼いでトップ10入りしたいくらいにしか思っていなかったのに」。
年頭にはまるで頭になかったことが、いまにも手の届くところにある。
そんな状況下でふと振り返るのは、2004年の今大会だ。
最終日は首位と6打差の17位タイからともにスタートしたかたわらの丸山茂樹は、あれよという間にリーダーボードのてっぺんにいた。
最終ホールこそ3パットで谷口徹に優勝を譲ったが、堂々2位に丸山は「今日は優勝だけを狙ってプレーした」と、あとから打ち明けたものだ。
「あの人は、1番ホールからその気だったって言うんです。それを聞いたとき、僕にはとても不可能だと思った。僕が優勝しようと思っても、絶対に優勝なんか出来ないと思っていたけれど・・・」。
当時の矢野にはピンと来なかったが、今ならあのときの丸山の気持ちが分る。
「出る試合すべて優勝争いするつもりでやっている」。
あれから4年の月日をかけて、矢野もようやくそう言えるようになった。