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ゴルフ日本シリーズJTカップ 2008
武藤俊憲「小田さんへのプレゼントにしたい」
227ヤードと距離が長く、奥から下りの急勾配のグリーンが待ち受ける最終18番。
ツアー屈指のパー3は、「3番アイアンを振り回してグリーンの真ん中を捉えることができた。効果があったのだと思います」。
納得顔で頷く武藤の視線の先には、小林宏平トレーナーの姿が。
数々のトップアスリートを見てきた小林さんと本格的に契約を結んだのは今年からだ。
その指導ぶりは厳しく、オフごとに拷問のようなトレーニングメニューを渡され「これやっといて下さい」。
こともなげに言われて恨みがましい思いが沸いたのも、一度や二度ではない。
しかしその分、1年間を戦い抜く体力が確かについた。
柔らかい筋肉から繰り出される豪快なスイングにはさらに磨きがかかり、冬のこの時期でも関節のあちこちに油を注入したかのように、どこもかしこもスムーズに動く。
もちろん、今年最後の1日を戦い抜く自信もある。
そして、9番から連続ボギーを打っても盛り返せる精神力。
2006年のツアー初優勝から2年。
「成長した証だな、と思える」。
頼りになる相棒の助言も良かった。
10番で、1.5メートルを外して自信がなくなった。
グリーンの端で、しきりに素振りを繰り返す武藤に専属キャディの小田亨さんにバシリと言われた。
「ストロークを考えるより、狙ったところに打ちなさい」。
その一言が後半の4バーディにつながった。
ツアー通算2勝目は、今年10月のコカ・コーラ東海クラシック。
しかし、そこに小田さんはいなかった。
ちょうど日程が重なった日本女子オープンで、小田さんは有村智恵プロのバッグを担ぐことが、年頭から決まっていたからだ。
そこでたまたま手が空いていたプロキャディの串田雅実さんとバトンタッチ。
よりによって、その週に武藤は勝ってしまったがあくまでも今年のエースは小田さんだ。
今季トップ10入り7回。それこそ毎週のようにV争いが出来たのも、小田さんのサポートがあったからこそ。
「その下地があっての優勝でしたから。次は、絶対に小田さんに優勝を贈りたい」。
目標の今季2勝目は、恩人への何よりのクリスマスプレゼントになる。