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三菱ダイヤモンドカップゴルフ 2009
マンデートーナメントからの参戦、木下裕太が好発進
雨と風が吹き荒れたこの日のラウンドも、おとぼけを決め込む。
「バーディって何? バーディなんて、知らねぇ〜よ、って」。
そう言い聞かせることで、無理に攻めてリスクをおかす可能性を完全に封じ込む。
「唯一狙った」という520ヤードの10番パー5も、ピンを狙うかわりにあえてスプーンで突っ込んでグリーン奧に打った。
「あのホールはそこに落としたほうが、チャンスがある」との言葉どおり、1メートルにつけてバーディを奪ったあとは、再び「パー狙い」のゴルフに徹した。
マンデーのスコアを1打上回る3アンダーで、好スタートを切った。
プロ転向を決めたのは、一昨年だ。
中3のとき、関東ジュニアの春夏連覇、日本ジュニア制覇。高校3年時に、全日本パブリック選手権優勝と、順調に実績を残していた木下が、自身の心の異変に気がついたのが日大3年のときだった。
「アマチュアの試合に出ても、緊張感が持てない。プレッシャーすら感じない。このままではダメになる」。
思い切って大学もやめ、あえて厳しい世界にどっぷりと身を浸すことを決めたのだ。
昨年のファイナルQTは予選ラウンド最終日の4日目に1打差で落選。今年はチャレンジトーナメントを主戦場にしており、ツアーはまだこれが2戦目だ。
それでも生来のカンの良さで、少ないチャンスをしっかりと成長につなげている。
「だんだん、ゲームの組み立て方が分かってきた」と、物怖じしない23歳が、目標としているのが今季初シードの池田勇太だ。
8歳からクラブを握り、通い始めた自宅近くの練習場は、ひとつ上の池田の練習場所でもあった。地元・千葉県の北谷津ゴルフガーデンには今や、ツアー1勝の篠崎紀夫もすでにヘッドプロとして常駐しており、お手本には事欠かなかった。
「早く“篠プロ”や池田先輩に追いつきたい。このチャンスを生かしたい」と力を込めながら、「そのためにも、明日コケないようにしなくちゃね」とおどける様子は、茶目っ気たっぷり。
またひとり、楽しみな若手が出てきた。