このゴルファー日本一決定戦は、プロ18年目にして初出場だが、「コースの難しさは、噂には聞いていたから」。

例年よりは、セッティングが易しいと周囲は言うが実際に、月曜日に来て回ってみても、警戒心は去らなかった。

フェアウェーは、ちょうど落下地点が絞られているし、グリーンは面積が小さい上に、うねっている。
練習ラウンドの段階で、心に決めた。
「たとえ距離が残っても、思いっきり刻んで行こう」。
前半は１番、８番。後半は10番と13番、18番。
その５ホール以外はすべてフェアウェーウッドやアイアンを握ったが、象徴的だったのが６番だ。

532ヤードのパー５で選択したのは、なんと４番アイアンだった。
ティグラウンドで目に入る右側の池。
「僕は、スライス系だから。ちょっとでもプッシュアウトやスライスすれば入ってしまう。どうせ、ドライバーで打ってもセカンドは届かないんだから」と、徹底的に危険を回避。そのかわり確実にフェアウェーに置いて、パーを取る。

ブレのないマネジメントの答えはいきなりスタートで出た。
１番からの３連続バーディに「あとはボギーを打ってもいいや、と。気楽にやれたのが良かった」と、最初の貯金を上手に生かした。

それでも４アンダーは、首位タイスタートに「おかしいなあ、こんなはずじゃなかったのに」と、照れ笑いで頭を掻いた。
「どんなに頑張ってもパープレーがやっとかなと思っていたから」と、本人も思いがけない好スタートに、目を丸くした。

２００１年に初シード入りを果たしたものの、７年目の２００７年に賞金ランク96位でシード落ち。
今年は、昨年のチャレンジトーナメントの賞金ランク３位の資格でツアーに参戦しているが、今大会は日本ゴルフツアー機構が主管するトーナメントとは出場カテゴリーが異なり、当初は出場権がなかった。

しかし、８月の関西オープンで27位に入り、同オープン上位10人の資格が下りてきた。
賞金総額２億円の今大会は、現在賞金ランクは44位につけて、シード奪還を目指す39歳には、願ってもない稼ぎ場だ。

まだツアーで未勝利の選手は好発進にも奢らない。
「余裕をかましていると、ボギーやダボがすぐ来るコース。明日も今日と同じくらいのスコアが出ちゃっても、痺れちゃう」。
そういう理由から、２日目の目標は「アンダーパー」。
気負わず真摯にコースと向き合う。

• 野仲 茂