Tournament article
三井住友VISA太平洋マスターズ 2009
今野康晴が首位浮上
さらに7番では左から15メートルのバーディパットを入れた。
通算10アンダーは、2位と2打差の単独首位で、今年も優勝争いに名乗りを上げた。
昨年大会は、片山晋呉と霧中のプレーオフにもつれ込みながら、4戦4敗目を喫したが、そのあとも不名誉な記録を更新中だ。
今年8月のVanaH杯KBCオーガスタでは池田勇太とのプレーオフに敗れ、さらに10月の日本オープンでも小田龍一に負け……。
「やっているときは、自分なりに一生懸命やってるつもりなんです。でも終わったあとに、知り合いやご近所さんにいろいろ言われると、ああ、もうちょっと頑張らないといけなかったなと思ったりするけれど」。
だからといって「今年こそ何がなんでもリベンジ」という気持ちにはならない。
「そりゃあ一度は勝ってみたいとは思うけど。まあいつかは勝てるでしょうくらいにしか思わない」。
プレーオフは、6戦6敗目を食らった「日本オープン」は、周囲に「負けたけど、戦いぶりは良かった」と褒められて、「そういうもんかな」と、少し気を良くしたほどだ。
そんな欲のなさが、周囲には少々歯がゆくもあるのだろう。
そして一番、そういう思いを味わっているのは、妻の崇乃子さんに違いない。
「負けて帰ると確かにいろいろ言われます」。
のんびり屋の夫の尻を叩いて歩く恐妻家としてツアーでも知られるが、今野にはそれがちょうどいい。
この日2日目は、スタート前に「今日は5位に入りなさい!」という指令が妻から下された。
3アンダーは10位タイからのスタートに「そんなに上手くいかないよ」と内心は思ったそうだが上がってみれば、5位どころかベストスコアの65をマークしてトップに立って「やっぱり僕は、奥さんに見られていたほうがいいんですね」と、のほほんと笑う。
防げたはずのミスや、短いパットを外すとロープの外から容赦なく浴びせかけられる妻の冷たい視線。
それが、今野には何よりの薬になる。
「奥さんが見ていると絶対に失敗しちゃいけないという気持ちになるから」と今野は言うが、もちろん叱られてばかりでもない。
今週の火曜日に風邪をひいた夫のために、夜中に千葉県の自宅から車を飛ばしてわざわざ宿泊先まで薬を届けに来てくれた。
たちまち熱は引き、いまはすっかり回復した。
今年は5月に首を痛め、現在は公傷制度の適用を受けての参戦だがこの2日間の冷え込みもものともせず、こうして元気に上位争いが出来るのも、そんな世話女房のおかげだ。
「感謝しています」。
献身的な妻に今度こそ、優勝で報いたい。
「今回は、プレーオフにはしたくない」。
次のツアー通算7勝目はきっちり72ホールで決着をつけたい。