Tournament article
UBS日本ゴルフツアー選手権 宍戸ヒルズ 2009
今季初シードの池田勇太が単独首位に
この日も、第2打はピッチングウェッジで出すだけ。残り120ヤードの第3打は奧3.5メートルが打ち切れなかった。
それまで17ホールで、6バーディボギーなしのラウンドを目前に、「最後を除けば完璧なゴルフだったのに!」と、地団駄を踏む。
報道陣を前にそんな悔しさを吐きだしているうちに、後続のリーダー、I・J・ジャンが上がりの連続ボギーで一歩後退。
最終日を前に、1打差の単独首位に躍り出た。
世界ジュニア優勝、日本ジュニア連覇。日本オープンのローアマ2回等々。アマチュア時代も、「勝って当たり前」と言われたほど強かった。
数々のアマタイトルをひっさげて、2008年に鳴り物入りでデビューを果たした23歳は、優勝争いで追う立場と追われる立場、どちらがいいかと聞かれて答えた。
「精神的には、追うほうが楽かな。でも別に、逃げるのも、面白いでしょ!」。
優勝の可能性を尋ねられ、「初日のゴルフは100点だったけど、俺の調子は毎日変わるから。明日は明日の風が吹く、だよ」。
このツアープレーヤーNO.1プレーヤー決定戦は、8月の世界ゴルフ選手権ブリヂストンインビテーショナルの出場権という“特典”が与えられるが、「なんか昨日、それ聞いた」と、まるで人ごとのように「まあ、そっちは勝ちゃ〜(勝ったら)聞いて」と、軽くいなした。
風に膨らむスリータックのだぼだぼパンツ。今季、初シード入りを果たした期待の新人はジャンボ尾崎に心酔し、「俺にとってのゴルフは、このイメージしかない」と言い切る。
破天荒で、物怖じしない第一印象は本人も承知の上で「俺の性格? わがままだと思う。あと、意地っぱりで強情でせっかちで…。あとは態度が悪いとか?」と、けろりと言った。
と、そのときだった。
ドドン、パパン!!!
派手な花火が宍戸の空に鳴り響き、ふいを突かれて会見場の椅子から飛び上がらんばかりに驚いた。
実は、大会恒例の夏祭り「グリーンフェスタかさま」が始まるその合図。
目を剥いて、胸を押さえて縮み上がった。
「たまげたよ、誰かにやられたかと思ったよっ!」。
実は、けっこうびびり屋さん?!
いつも強気な態度ももしかしたら、その裏返しなのかもしれない。
ツアーで初の最終日最終組で回ったのは、昨年10月のコカ・コーラ東海クラシック。前日は、夜も眠れなかったと打ち明ける。
「翌朝は、ご飯も食べられなかった」と振り返る。
だが、肝心なのはその次だ。あのときの経験を「生かすも殺すも自分次第」。
最終日を、首位タイでスタートしながら最終ホールで池に入れ、2位に敗れた悔しさも忘れちゃいないが、「一回やっているのがデカイ。俺の性格上いちど経験すれば、大丈夫と思うから」と、やっぱり強気。
勝てば、記念のツアー初優勝が5年シードのビッグタイトル。
「まあ、勝ちゃー(勝てば)何でもいいけれど。でも、“日本”とつけば聞こえはいいよね!」。
そう言い残して池田は、サインを待つファンの元へ急ぎ足で戻っていった。
求められれば絶対に断らない。
それがポリシー。「だって、サインしないプロはアホでしょ?」。
言葉は荒いが、根はあったかい男なのだ。