11番パー４で、残り89ヤードの第２打を直接入れてイーグルを決めるなど、この日ボギーなしの10アンダーは、初日に富田雅哉が出した62をあっさり塗り替えるコース新。おまけに自己ベストを一気に２打も上回る61にも、「もっと伸ばせたかもしれない」というから恐れ入る。

１番パー５は、６メートルのイーグルチャンスを外した。４番は手前４メートルを、14番では２メートルくらいのバーディパットを外した。

「自分でも信じられないけれど……。あと３つはいけてたかな」。
実現していれば、ツアー最小スコアの59さえ塗り替えていたところだった。

ここ宝塚ゴルフ倶楽部はこれまで一度もラウンド経験がない上に、今週は大会初日のコース入りに、練習ラウンドも出来なかった。
まさにぶっつけ本番で挑む舞台は先週の全米プロのへーゼルティンナショナルゴルフクラブよりも1000ヤードほど距離は短いが、「また違った難しさがある」。
両サイドにひそむ白杭に「ティショットの難易度は、こちらのほうが上」と、ほとんど曲げない選手でさえ、常にＯＢの恐怖に怯えながらのラウンドだ。

おまけに時差ボケは、いまがピークで毎晩なかなか寝付かれず、夜中に必ず一度目が覚めるがそれらを吹き飛ばしてしまうくらい、「ゴルフの状態的にも、精神的にも充実している」と、藤田は言う。

７月のセガサミーカップでツアー通算７勝目をあげて、その翌週の世界ランクで100位内に食い込み、２年連続のメジャー切符を得た。
世界の強豪が集う舞台で、身長168センチの選手が「体当たりでぶつかった。日本の代表として、なんとかアピールがしたかった」と、燃えに燃えた。

最終日こそ、ひとつもバーディが奪えないままスコアを崩したが、17位タイでスタートした初日からの３日間は、「技術的な部分は、他の選手と劣っていない。自分でも、十分に戦えると感じられた」と、成果をつかんだ。

「めったなことでは自分の実力を認めたがらない選手」とは、本人も認めるところだが、これほど確かな手応えを感じている今こそ、「もっと評価してあげないといけないんだと、自分に言い聞かせてゴルフをしている」。
その思いが、帰国直後の快進撃につながっている。
「気持ちの余裕があるからミスにも寛容になれる。思い切ってやろうと思える」。
最終日ももちろん堂々と、かねてからの目標でもあった自身初の「年間２勝」を狙っていく。

ゲームは初日から、息つく間もないバーディ戦に「明日は、自分が伸ばせなかったら置いていかれる。自分の限界まで伸ばすつもりでやる」と、その勢いはとどまることを知らない。

• 藤田 寛之
• 富田 雅哉