表彰式を終えてクラブハウスへの道のりを、両サイドにぎっしりと埋め尽くした大ギャラリーに向かって池田勇太は大声で、何度も言った。

「ごめんね、すぐに戻ってくるからね！」。

チャンピオンは表彰式のあとも、主催者と関係者をねぎらうパーティの出席や優勝会見など、こなさなければならない行事がとにかく多い。

そのせいで、最後まで応援してくれたファンへのお礼のサイン会が、後回しになってしまうことに心を痛めた池田は飛び交う声援に何度もわびて、「あとで必ずサインしに帰ってくる」と約束した。

だからパーティで、スポンサーへの挨拶を済ませたあと、真っ先にクラブハウスを飛び出して、長い列に黙々とペンを走らせた。

そんな義理堅い男だから、当然“選考”にも時間をかけた。

チャンピオンが決めるベストサポーター賞。

キヤノンオープンでは毎年、会場内のキヤノンテントでファンのみなさんから選手への写真応援メッセージを募集している。
キヤノンのデジタルカメラで撮影したみなさんの写真に、めいめい言葉を書き込んでいただき、合成プリントしたメッセージカードを、クラブハウス内の選手ラウンジに掲示している。

また最終日には、優勝者を応援してくださった方の中から選手自身が“ベストサポーター賞”を選び、サイン入りの写真をプレゼントすることになっている。

部屋の壁いっぱいの巨大なボードには、今年は台風の影響で大会が3日間に短縮されたにもかかわらず、選手を思う気持ちのこもったメッセージで一杯になった。
その中で、チャンピオンに当てた写真は86枚もあり、「こんなにたくさん！」と、目を輝かせた池田はその１枚１枚にじっくり時間をかけて目を通し、「どれにしようか迷っちまうな」と熟考に熟考を重ねた上で、地元小学生の男の子が贈ってくれた１枚を選び出した。

プロのフォトグラファーが、キヤノンのデジタル一眼レフカメラで撮影してくださった池田の写真はキャディの福田央さんとの２ショットだった。
その余白に「応援ありがとう」と心を込めてお礼を書いて、丁寧にサインをしたためた。

池田を応援してくれたＡくん。
プロのサイン入りの写真はまもなく届くよ、待っていてね。

また池田のほか選手たちに、心温まる言葉で応援メッセージを寄せてくださったたくさんのゴルフファンのみなさんへ。
「本当にありがとうございました。また今週は、遼くんがいないにもかかわらず、最終日には１万人を超えるみなさんが、応援しに来て下さいました。選手を代表して、お礼を言いたいと思います。そしてこれからも選手一丸となって、面白いゲームをたくさんお見せしていきたいと思いますので、引き続き応援をよろしくお願いします！」（池田勇太）。

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