記事
兼本貴司が「可愛くって、もみじみたい!」
「みんな食器を持って食べることを、忘れてはいませんか!!」。
先生の厳しい一声に、一番動揺したのが兼本だったかもしれない。
ここ広島県の竹原市立吉名小学校は、「食育」のカリキュラムを通じて子供たちには食事の際のマナーも厳しく躾けてられている。普段はきっちり出来るのに、この日に限って子供たちは、憧れのプロと早くお喋りしたくてうずうずしていた。
でも担任の永井利明・先生に「ご飯をいただいてからにしようね」と釘を刺されてどことなく気が急いて、心ここにあらずといった風でお箸を動かしていたのだ。
もちろん先生は、兼本に向かって言ったのではなかったが、ちょうど自分も食器を机に置いたまま食べていたところだったから、ふいを突かれてドキリとしたのだ。
さっそく子供たちにならってしっかり手に持って、背筋を伸ばして美味しい給食を完食した兼本は、あっという間に取り囲まれた。
サインと質問攻めに遭って「子供たちになつかれた」。
「プロは何歳」と聞かれて答えると、「30前半に見える。40歳には絶対に見えない」と口々に褒めそやされて、ますます気分がよくなった。
腰に小さな両手を巻き付けられ、腕にぶら下がられたまま、階段を下りてきた。
「夢を持とう」の講演会の前に、いったん控えた“校長室”まで、大勢の子供たちに見送られて戻ってきた。
握手を交わしたその手に次々と、子供たちが書いたという手紙を乗せられて「大人気でしょ?」とちょっぴり得意げ。
可愛らしい便せんを開きながら、しみじみとつぶやく。
「僕、子供の手って好きなんです」。
広島の地元銘菓になぞらえて「可愛くって、もみじみたい」と微笑んで、「僕の手にすっぽりとくるまれてしまうくらいに小さくて。純心な心にも触れて、溢れんばかりのパワーをもらえた。新鮮な気持ちになれました」と、感謝した。