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カシオワールドオープン 2009
丸山茂樹が首位タイに
昨年までの9年間を戦ってきたアメリカで持ち帰ったのは、当然のことながらスランプだけではない。
「ビジェイとそんなやりとりが出来るのも、アメリカでやってきたからこそ」。
米ツアー3勝のプライドが、土壇場で目覚めた。
最終18番は残り264ヤードの第2打で、もういちどドライバーを握る“直ドラ”でグリーンエッジを捉え、ウェッジでピンそばに寄せてバーディフィニッシュ。
ナイスラウンドの掛け声に、満面笑みで応える。
「あるたす!」。
この日2日目はピンチらしいピンチもなく、むしろ15番の1.5メートルのチャンスなど、「まだまだぶりぶり外しているから。もう少しパットが入っていたら、17アンダーは出せていた」と言うほどの好調さ。
ボギーなしの65をマークして「気分いいです!」。
何よりもティショットだ。
「やだなと思う球が、昨日から一発も出ていない。こんなに良いショットが打てるのは、2004年くらいからずっとなかった」。
アメリカで「ドライバーイップス」にかかって帰ってきた。
「トップから、フィニッシュのことを考えると、ダウンスイングで電気が走る」。
ひどく曲げた記憶が、気持ち良く振り切らせてくれない。
ヘッドの大型化にも馴染めず、昔の350CCと小ぶりのドライバーを引っ張り出してきたのは今年9月だ。
コントロール重視のスイングを徹底的に体に馴染ませることで、安定感を取り戻しつつあった。
さらに決定打は、11月のレクサス選手権。
父・護さんに「どうせ気持ちよくフィニッシュ出来ないならやってみろよ」と薦められたのはパンチショットのように、フォロースルーを肩の高さ程度に抑え、強く低い弾道で打つスティンガーショットだった。
「おかげで方向性と球筋が安定して、ダウンスイングの迷いがすべて無くなった」。
いまは曲がることを、怖れることもない。
「嫌なトラウマが相当消えているのは確か」と言い切れる。
厳しい鍛錬で2003年から体重71キロをキープしているが、今年9月に40歳の誕生日を迎えてからというもの、週の月曜はストレッチと簡単なエクササイズにとどめ、また火曜の練習ラウンドを控え、完全休息の日と決めた。
「歳も歳だから。連戦が続くといくらガチガチにトレーニングをしていても、やっぱり疲労が重なってくる。練習すればいいってもんじゃない。今は、頭と体をいかにセーブしてプレーに臨むか」。
オーバーワークを控えたことで、かえって体のバランスが整ってきたという。
「今さら、若い子に追いつこうなんて気はさらさらない」とは言いながら、いよいよツアーも終盤を迎えて、不惑の戦士はますます元気だ。
国内のみの賞金ランキングで26位は、同25位までに与えられる次週のツアー最終戦「ゴルフ日本シリーズJTカップ」の出場権まであと一歩。
「最後も出たいので、頑張ります。遼くんと勇太の熾烈な争いに注目が集まっているうちに、しれっと決めます」と笑い飛ばした。