記事

日本オープンゴルフ選手権競技 2000

カップに刻まれた歴史

65年の年月を継承してきた優勝カップ秘話

 台座に歴代優勝者の名前が刻まれた日本オープンの優勝カップは、重さ8キロもある純度95パーセントの銀製品。
 鳳凰の絵柄はカップの内側からタガネで打ち出した、象眼方式と呼ばれる特殊な技法で造られているが、この技法を使える職人は、日本に2〜3人あまり。しかも高齢者のため、同じものを造るのは不可能で、工芸品としての価値は1,000万円と評価されているという。

 実はこのカップは2代目で、初代のカップは、太平洋戦争のときに行方不明になり、現在に到る。
 1927年に第1回の日本オープンが行われたが、その時にはカップはなく、優勝者にカップが贈られるようになったのは、第2回大会から。初代のカップは日本ゴルフ協会の設立にかかわった大谷光明氏がデザイン。大谷氏は西本願寺21代の門主であったため、仏教色の濃い東洋的なもので、中国周王朝時代の香炉をイメージしたものであった。

 1942年〜49年の間、太平洋戦争のために日本オープンは開催を中止し、その際に41年の優勝者・廷特春が故郷のピョンヤンにその初代カップを持ち帰り、そのまま行方不明になってしまったのだ。

現在のこのカップがチャンピオンの手に渡されるようになったのは1952年、第17回大会から。初めてこれを手にしたのは、当時最強といわれた中村寅吉だった。
 以来、小針春芳、陳清波、戸田藤一郎、杉原輝雄、杉本英世、橘田規、佐藤精一、河野高明、島田幸作、尾崎将司、青木功、中島常幸など、時代を代表するゴルファーの手を渡ってきた。
 今年、この栄光のカップを手にする者は…。

    関連記事