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東海クラシック 1999
「ぼくの究極の理想は…」片山晋呉
本文:尾崎直道のショットを真似て、湯原信光と同じ型のパターを使い、初日トップタイに立った片山晋呉。だが、好調の要因は、それだけにとどまらなかった。通算12 アンダーで単独首位にたった2日目には、さらに、この人の名も披露した。
「究極の理想はベン・ホーガン。毎週、日曜日と月曜日には、いつもかかさずビデオを見ている」。
ベン・ホーガンといえば、モダンスイングの開祖。スイング理論を解いたレッスン書『モダンゴルフ』は、プロアマ問わずゴルフを愛する人の間では、いまでもベストセラーだ。
しかし片山は、「本ではだめなんです」という。
「というのは、本は和訳されてちゃってるでしょう。訳だと、やっぱり少しずつ曲解されて載ってしまうから。真実の部分まではなかなか伝わりにくいと思うんです。でも、実際に本人がスイングしてるビデオなら、これほど正確なものはないでしょう?」(片山)
ベン・ホーガンが活躍したのはもう40数年前のこと。スイングビデオなど、そうそう残っているはずもない。無理を承知で、「ゴルフコレクター。…というか、ゴルフオタク」(片山)の知人に、希望してみたら、「なんと、あったんです。いろんな試合でのスイングが収録されていて、セントアンドリュース(スコットランド)の18番ホールのショットも入ってる。ホーガンのビデオ持ってる人なんてきっと、ボクくらい。お宝ですよ」。
ビデオを手に入れたのは、昨年。ちょうどツアーを長期休場し、胸部椎間板ヘルニアの手術、治療にあたっていたころだ。
病床で、ヒマさえあればわずか15分ほどのテープをまわし、スイングに見入ったという。
「はじめて見たときは衝撃でした。あの時代にあれほどのスイングをしているということは、今のボールとクラブを持ってやったら、いくつ勝てちゃうんだろうって思った。スイングのなかで一番重要と言われている、インパクトに入る寸前の15〜20 センチの位置が、世界一素晴らしいと思う」。