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ダイヤモンドカップゴルフ 2011

上田諭尉(うえだゆい)は首位タイにも「中身を見たらちゃらんぽらん」

最終9番は深いラフから刻んで、1メートルのパーパットを拾って照れ笑い。思わず手刀を切るポーズは、まさに「ごっちゃんです」の心境だった。

毎年、このダイヤモンドカップは絞られたフェアウェーと深いラフに苦しめられる。「ある意味、ジャパンオープン」と、上田が表現するゆえんだ。
まして、この時期の芝は、いままさに成長期にあり、秋に行われる同オープンよりも「重いんです」。上田に言わせれば「春の日本オープン」とも表現出来て、それだけ手強い。

今週は、2番と18番で計測中のドライビングディスタンスはこの日、2番で気合を入れすぎて「チーピンした」と、たった234ヤードしか記録せず、この日はランク117位に沈んだが、普段は飛ばし屋。

その分、球も大きく曲がる。けっこう散らばる。
「僕には合わない」。苦手なコースで本人も、あとから振り返るのに苦労した。怒濤の8バーディは、「スコアだけならすげえ、かもしれないけれど。中身を見たらちゃらんぽらん」。

何しろこの日、フェアウェーをキープしたのはたった2回にもかかわらず、66の6アンダーは「これが僕の持ち味です」。相性の良くないコースだからと「諦めてはいないけど、曲がっても当然と思える」。その分、フェアウェーを捉えたら、「ラッキーと思える。楽しんで回れてる」。
良い意味の開き直りが、奏功している。

首位タイの好発進に、「イヤイヤイヤイヤ、たまたまでしょう」とプルプルと首を振るのは謙遜ではない。
「4日間終わったら、指定席にいますよ」と、本気で宣言しながらも、いま好調であることには間違いない。

先週の「とおとうみ浜松オープン」は、自らもハンディ2の腕前を持つ弟の崇宏(たかひろ)さんが、今季3度目のキャディをつとめてくれた。

2007年の開幕戦で兄を初優勝へと導いてくれた“エース”が今回は、パッティング時に「クラブがインサイドに上がっている」と指摘してくれた。プロゴルファーの兄よりもむしろ研究熱心で、たまに会場に来ても、兄はそっちのけで他の選手を見ているときがある。
「ちょっと、ちゃんと俺を見ててよ」と口ではスネながらも、結局はそうやって兄と他の選手のスイングを見比べてはあとで的確なアドバイスを送ってくれることに、4つ上の兄も大いに頼りにしている。

昨季も土壇場でシードに滑り込んだ兄を救ってくれたのも崇宏さんだった。先週は最終日に65をマークして、また今週も引き続き弟さんの置き土産に助けられている。
ツアー通算2勝目のチャンスにひとつ、願いたいのは週末にあの石川遼と、同組にならないようにということだ。

先週は、同じクラブ契約先はミズノで親交も深い小林正則のツアー初優勝には何に一番、感動したかというと、「遼と回って勝った」ということ。
「遼が相手じゃ、ギャラリーのほとんどが遼の応援ですから。そん中で勝ったのがすごい。僕なら絶対に、自信を持って負けていた」。

その根拠は数年前に、やはり上田も石川と週末をラウンドして、大崩れした経験があるからだ。しかも地元開催の大会だった。「遼より近くに寄せたのに、俺より歓声が大きくて。アウェイになっていた」。

剛胆な性格に見えて、実は典型的な「A型。あの雰囲気にのみ込まれてしまう」そんなわけはない、と分かっていながらつい、被害妄想が頭をもたげる。
「ギャラリーが、みんな僕にボギーを打てと思ってるんだろうな、とか・・・。O型の小林のように、逆によーしやったろ、と僕には思えない」。

そんなこんなで大いに気になる存在は、上田と4打差の14位タイに控えている。「遼と回ったら絶対に勝てない。優勝するには知らないうちにすーっと上位に行って・・・。自分でそう願ってる」と本気で祈らんばかりだったが・・・?!

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