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ブリヂストンオープン 1999
開催前日に急きょ持ち替えた『中尺パター』で、井戸木鴻樹が上位進出
大会週の水曜日。練習ラウンドを終えた井戸木の好奇心を捕らえたのは、ロッカーに山積みになった試打用のオデッセイ社のパターだった。ふと、手にとってかまえてみると、何かひらめくものがあった。
今季は、サントリーオープンの14位が最高。出場22試合中14試合で予選落ちし、ここまで賞金ランキングは112位と不振にあえいでいた最中のそのパターとの出会いは、“劇的”といってもよかったという。
「今年に入って、1メートルくらいの短いパット打つときに、なんでかわからへんのやけど、テイクバックでヘッドが揺れるんです。それで、3回に2回は、入れとかなあかん、短いパーパットをはずしてしまう。悩めば悩むほど、揺れはひどくなって、手があがっていかへんようになってたんです」。
もともとパットは苦手。「だからなおさらパター勝負だとわかっているのに、悩みはじめたらもう、どないもできなくなってしまって…」八方ふさがりの状態に陥っていた。
それが、「アドレスしたときに必ずよぎっていた、それまでの不安がウソのように消えたような気がした」(井戸木)。
さっそく翌日から使いはじめると、すこぶるいい感じだった。
「振り子の要領でスムーズに振れる。打ち急ぎもないし、少し上体があがるから、ラインも見やすい」。8番、171ヤードのパー3では、右真横6メートルほどの「ものすごいフックライン」を気持ちよく沈めた。18番、572ヤードのパー5は、手前から4 メートル。何の迷いもなくど真ん中から決めて、順位をひとつあげてホールアウト。
「優勝…なんて大それたこと言いませんけど、今後の試合につながるいい成績を残せたら…とは思いますね。中尺パターは最後の救い。しばらく、これに頼ろうと思ってます」とホールアウト後も練習に余念がなかった。