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中日クラウンズ 2009
杉原輝雄が50回連続出場を達成
そして最後の品には、いよいよ背中を向けてしまった。
ハリー・ウィンストン社の高級腕時計は、470万円相当。
同社の濱田眞樹・代表取締役社長に向かって背中越しに思わずつぶやく。
「それは、あかんわ・・・」。
感謝したいのは、こちらのほうだと言いたかった。
史上最多の50回連続出場はもちろん自らのたゆまぬ鍛錬のたまものであることは間違いないが、本人にしてみれば「長く大会を続けてきてくださったからこそ。僕にはラッキーだっただけなんです」。
たとえば大会が30回で終わっていたら、これだけの記録を出すことも出来なかったのだ。
主催者のご尽力を思えば、これほどの祝いの品も「僕には過ぎたこと」と恐縮するのも当然だった。
そのご厚意に精一杯にプレーで答えた。
16番で今年初バーディ。ピンまで残り110ヤードの第2打を9番アイアンで1.5メートルにつけて大ギャラリーを沸かせた。
大先輩の中村寅吉プロを負かしたのは64年の5回大会。
しかし、半世紀にわたる歴史の中で、思い出すのは敗れた試合というのがドンらしい。
青木功に逆転負けを喫した75年の16回大会。
「16番で、チャンスを外し、17番でボギーにして青木くんに負けた。あの試合はいまだに悔やまれます」と、悔しがる。
これほどの記録を達成しても、ゴルフへの貪欲な情熱はまだまだ尽きることがない。
「50回目も目指してやってきたわけではなく、たまたまそういう結果になったというだけのことだけれど。出来ることなら51回目も、来られたらいい。さらに52回と続けばいい」。
世界を見渡せば、アーノルド・パーマーがマスターズで、また全米アマでチャールズ・エバンズが50回連続出場を達成しているが、いま更新の可能性があるのは杉原だけだ。