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マンダムルシードよみうりオープンゴルフトーナメント 2005
ジャンボ尾崎が、出場1000試合を達成!!
出場1000試合達成のセレモニーは、ジャンボのホールアウト後にも予定されていた。
そこでは共同インタビューと、出場選手たちが祝辞をしたためた寄せ書きのパネルが、中嶋常幸の手から贈られることになっていた。
しかし、ジャンボは会見場に現れなかった。
プロサービスのバスに寄ってクラブの調整をしたあと、そのまま帰ると言ってきかなかった。スタッフの再三の説得に、ジャンボは言ったそうだ。
「杉原のオヤジさんも一緒に表彰するというのなら、出るよ」。
当初からジャンボがずっと気にかけていたのは、この大会で自分が出場1000試合目というならば、自分よりずっと年上でベテランの杉原輝雄は、とっくに1000を超えているはずではないのか、ということだった。
しかし、現状では杉原のデビュー当時の詳細なデータが残っておらず、確かめるすべがない。
「そんな理由で、俺がオヤジさんより先に表彰されるのは、筋が違う」と、ジャンボは言ったのだった。
その言い分を聞きつけて、すぐにジャンボのもとへ駆けつけたのは、杉原本人だった。
「確かに、ジャンボの言うとおりだとは思った。でもそれとは別に主催者のみなさんが、こうしてツアーを盛り上げるために準備をしてくださったのだから、われわれはそれに答えなくてはいけないと言ったんです。ジャンボの凄さは、1000試合ということ以上に、ツアーへの貢献度の大きさ。中村寅吉さんがカナダカップで起こしたゴルフブームを、さらに大型化して引っ張ってきた。このことだけでも、ちゃんと評価されていいことだ、と」(杉原)。
ホールアウトから約30分後。
杉原とともに会見場に現れたジャンボは、幾分かの照れをあらわにしながら、中嶋から寄せ書きのパネルを受け取ったあと、「こんなの、ちっとも嬉しくない」と言った。
「1000試合出場というのは良い言い方をすればよく頑張った、ということだけど、別の言い方をすれば、ただ体が元気でやってきただけ。われわれプロは数字よりも名誉、プライドを何よりも優先させてやっていくものだから。それよりも、オヤジさんはあの体で、あのスイングでいろんなことがありながら、頑張ってきたのだから。それを何よりいちばんに表彰してもらいたかった。順番をはき違えてはいけない。近日中に、きちっと杉原さんを表彰してもらいたい」。
最後まで“ドン”を気遣い、立て続けた。
最後に2人でがっちりと握手を交わし、セレモニーは終了した。
ひとしきり喧騒が去ったクラブハウスで、杉原がポツリと言った。
「ジャンボが、あれだけ僕のことを言ってくれたのが嬉しかった」と。