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日本も、韓国チームも「今、日本のために」
今年3月11日に、日本で起きた未曾有の災害には、世界中に衝撃が走った。韓国内でもその様子が報道されない日はなく、被災地の悲惨な状況に胸を痛めた賞金王の金庚泰(キムキョンテ)も、いち早く日本のために動いた。
マスターズトーナメントは遠征直前に、日帰りで来日。都内にある日本ゴルフツアー機構の事務所にわざわざ義援金を届けていった。
「マスターズも大事ですが、去年、賞金王にまでなれたのは、日本のみなさんのおかげですから」。恩返しがしたい。その一心で、今年メジャー初戦の前に、わざわざ強行軍を組んだのだった。
金だけではなく、いまや日本ツアーで一大勢力を築きつつある韓国勢は、みな今季は開幕からキャップやポロシャツに日本への応援メッセージを縫いつけて戦い、また今大会直前の6月28日には、日本ツアーで戦う韓国人選手たちが、大震災のためのチャリティコンペを開催。被災地復興支援のために、ひとはだ脱いでいる。
そして迎えるこの日韓戦。優勝賞金の20万ドルをすべて「義援金として使ってもらってはどうか」と、提案してくれたのも、韓国チームのほうからだった。
ありがたい申し出だった。
今年の3回大会は、両国の栄誉を争うのはもちろんだが、同時に両ツアーとも、日本ツアーの今年のスローガンでもある「今、日本のために」との思いを、まさに背負っての戦いとなる。もちろん、それは我らが日本チームにとってはなおさらである
大会前日は30日の木曜日に、大会オフィシャルホテルの韓国・釜山市内のパラダイスホテルの一室で行われた両チーム合同記者会見で、青木功と韓長相(ハンジャンサン)の両チームキャプテンが、選手宣誓の契約書を交わす様子を目前にして、改めて思いをひとつにしたメンバーたち。
昨年に続き、2年連続の代表入りをした池田勇太がいう。
「今はとにかく日本のために戦って、勝利することが大事だと思う。そのためにもぜひ一丸となって、優勝を持ち帰る」。
石川遼は、「今こそ日本の絆が問われる時期。より一層気持ちを強く持ってやっていきたい」。
今年、初の代表入りをしたベテランの河井博大も「僕らの戦いが、少しでも日本を元気づけられるなら光栄です。力を合わせてなんとしても勝ちたい」。
片山晋呉は、地元・茨城の生家がいまやすっかりさら地になるなど、自ら被災者でもある。それだけに、思いもひとしおだ。
韓国チームは今年、メジャーチャンピオンのY・E・ヤンを擁して、「最強メンバーも良いところ」と、過去5度の日本の賞金王も、さすがに驚異を感じてはいるが、気持ちで負けない。
「僕らも日の丸を背負って力を合わせてひとつになって、日本のためにプレーします」。
キャプテン・アオキも含めて11人のサムライが今、日本のために立ち上がる。