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髙橋竜彦リザーブ選手としての誇り
「・・・竜彦、どう思う?」。
「5番アイアンで、思い切って行ってください」。
果たして、ティショットは思い通りの弾道を描いて、ピンを刺した。
OK距離につけてバーディ。
髙橋の存在が、最大限に生かされた瞬間だった。
今回はリザーブ、いわゆる“控え選手”としての登板だった。
幸いにも棄権する選手が出なかったため、髙橋がプレーする機会は持てなかった。
そのかわり、精力的に、他の選手たちのラウンドについて歩いた。毎日、ホール間を行き来して、「自分ができることを精一杯やれたかな」。
満足そうに振り返った。
特に、他のツアーよりは不利なパー3。
ティグラウンドが一番後ろのJGTOチームは毎ホールでオナーとなるため、クラブの番手や風向きなど、参考にできるものが何もない。
そんなときこそ、髙橋の出番だ。
自分の持っている情報を総動員し、自分も一緒にプレーしている気持ちになって、アドバイスを送ったという。
インターバルの合間には他の出場選手と連れ立って、今大会のチャリティに協力してくれた『NPO難病のこども支援全国ネットワーク』と『社会福祉法人全国社会福祉協議会』の展示ブースも訪問するなど、積極的に動き回った。
プレーはできなかったかもしれないが、「5番目の選手として、ここにいられるだけでも光栄だった」と、髙橋は言った。
今年8月のアイフルカップでプロ9年目にして初優勝をあげて、初シード入り。
今までなら毎年この時期はツアーの出場権をかけた予選会に奔走し、とてもまわりに目を向ける余裕など持てなかった。
「そんな自分が、メンバーのひとりとしてここにいられた。男子が勝って当然、という空気の中で、みんなの重圧が伝わってきた。そんな状況の中で、力を合わせてこうして勝てた。その瞬間に立ち会えて、ほんとうによかったと思っています」。
リザーブ選手としての勤めを、立派に果たした2日間だった。