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藤本佳則 『間違いなく良い経験でした』 <全英オープン最終日>

張り詰めていた緊張の糸がほぐれたのだろう。
藤本は、昨日までの険しい表情に比べて、とても柔らかな表情をしていた。
「疲れました。やっぱりこういう舞台は精神的にしんどい面がありますね。」

つい4ヶ月前まで大学生。
昨年末にプロ転向して、そして今年、ルーキーとして日本ツアーを転戦。
開幕するや否や、常に上位での争いを展開。自身5戦目となる日本のメジャー、『日本ゴルフツアー選手権Citibank Cup Shishido Hills』で、ルーキーとしては最速となる優勝を果たす。
そして、この大舞台に初出場。初日と2日目は、世界ランキングの3位のリー・ウェストウッドと、世界ランキング6位で今年のマスターズ覇者のババ・ワトソンと同組。
今週の練習日に、「マキロイとかババ・ワトソンとか、テレビで見ていた選手が目の前で練習していたりするのでワクワクする。」と言っていた選手達と同等に戦った。
そして予選通過。「予選通過で満足してちゃいけない。」とは、自分に対して言い聞かせていたのだろう。

4日間を戦い抜いて感じたことは言い尽くせないほどある。
ただ、あえて言うとすれば、「今回の全英オープンが、今後の自分にとって良い経験になったことは間違いない。」ということだ。

今日は、1バーディ、4ボギーの3オーバー。
4日間トータル7オーバーの54位タイで海外初出場となるメジャー大会を終えた。
「スコアだけを見るとヘタになった気もするけど、でもそんなことは無い。日本だったら優勝争いをしていてもおかしくない内容だった。」と胸を張る。

プロとして初となる海外での試合を経験して、日本以外にも興味が湧いてきた。
「こっちのトーナメントの雰囲気、好きです。ギャラリーも、例えばグリーンをキャッチしただけでもすごく沸いてくれるし、大きな拍手もくれるし。英語が喋れるようになったら挑戦したいです。」

来週は、日本に帰って『サン・クロレラクラシック』に出場。次の週はアメリカのオハイオ州で開催される『WGC−ブリヂストンインビテーショナル』に出て、帰国後すぐに『関西オープン』に出場する。そこから日本ツアーは終盤戦まで、ほぼ休みなくトーナメントが続く。
「ボクは新入社員ですから休めないんですよ。」

周囲を笑わせたあと、こう締めくくった。
「日本であと1つ、2つ勝ったら、もしかしたら賞金王もあるかもしれないですけどね。もう日本で頑張るだけです。」

最後は、かぶっていたキャップを取って、囲んでいた報道陣に向かって深々と頭を下げた。 「1週間、どうもありがとうございました。」
それは、あまりにも清々しい姿だった。

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